2014年6月20日金曜日

東電の標識杭

 送電鉄塔のことは何度か書いている。いわきの平地から阿武隈の山へ分け入ると、いやでも送電鉄塔が目に入る。3・11後は東北電力の鉄塔か、東京電力の鉄塔か、気になるようになった。初めての場合は帰宅後、国土地理院の電子地図で確かめる。

 夏井川渓谷には両方の鉄塔が立っている。わが隠居(無量庵)の対岸に東北電力の水力発電所がある。送電鉄塔がすぐ近くに立つ。送電線は左岸にある道路と線路をまたぎ、山頂へと延びたあと、上流の小野町方面と下流の平方面へ分かれる。東電の広野火発、福島第一、第二原発の送電線も渓谷を横切る。

 渓谷は花の名所でもある。4月のアカヤシオ(イワツツジ)、5月のシロヤシオやヤマツツジ、トウゴクミツバツツジ、6月のヤマボウシとウツギ類……。隠居に着けば散策を兼ねて、車で移動中であれば空きスペースに止めて花の写真を撮る。
 
 ヤマボウシの花は、尾根に火発の送電鉄塔が立つ渓谷のとっかかりに咲いていた。磐越東線のトンネルと踏切が近い。トンネルの上へと通じる林道の入り口に車を止めた。そばに、夏草にまぎれるようにして標識杭が立っている=写真。「広野火力」「東京電力平送電所 ☎――」と書かれてある。
 
 だからどうなんだと言われそうだが、思わぬ場所で「東電」の文字が目に入ると、心がざわつく。しばらく標識杭と向き合ったあと、尾根の送電鉄塔をふり仰いだ。

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