2024年4月16日火曜日

花見谷

                     
 「花見山」という言葉がある。その連想で「花見谷」という言葉が思い浮かんだ。4月14日・日曜日の夏井川渓谷はまさに「花見谷」だった。

 Ⅴ字谷をアカヤシオ(岩ツツジ)の花が彩り、ヤマザクラの花が咲き誇っていた。隠居の庭にあるシダレザクラも満開になった。

 それだけではない。隠居の庭には上の孫が小学校に入学したときに植えたサクラがある。

 このサクラは義弟からの入学祝いだ。義弟がホームセンターから買ってきた苗木を、私が代わって植えた。

 それが10年ほどたって樹高3メートルを超え、四方に枝を広げながら、花をいっぱい咲かせるようになった。

 2~3年前まではいかにも幼木そのものといった感じだったが、今年(2024年)はりりしく立っている。若木なりに生長し、花見の対象木に加わった。

 前の日曜日(4月7日)、対岸にある前山のアカヤシオが満開だった。庭のシダレザクラと、義弟のサクラは開花したばかりで、1週間後は庭も、対岸の奥山も花で彩られるはず――そう踏んだとおりになった。

 カミサンが弟に声をかけると、「花を見たい」という。14日は朝から快晴だった。義弟を加えて3人で隠居へ出かけた。

 平郊外の丘陵地は青空とヤマザクラのピンクの花、淡い芽吹きの緑でさわやかな水彩画を見るようだった。

 道々のサクラは、今年は開花が順不同だ。行く先々でシダレザクラは散り、ソメイヨシノが満開だった。

 さすがにソメイヨシノの花の華麗さは群を抜く。遅まきながら満開のソメイヨシノに心が洗われた。

 渓谷に入ると、ヤマザクラの花が迎えてくれた。木々も芽吹き始めていた。隠居に着くやいなや、カミサンが弟をサクラのそばに連れて行く。

 義弟は、自分で買い求めた苗木が育ち、いっぱい花を付けていることに満足した様子だった。

品種はソメイヨシノらしい。にしては、花の色が白い。土壌がそうさせるのか。あるいは、ヤマザクラ系の品種だろうか。一部ですでにあおい若葉を広げていた。

 その白い花を手前に、庭のシダレザクラと対岸のアカヤシオのピンクを一つのフレームに収めようと、カミサンがカメラを手に取った=写真。

 足元にはオオイヌノフグリの青、辛み大根のピンク、タンポポの黄色い花が散らばるように咲いている。

快晴無風。徐々に気温が上がって、上着を脱ぐ。樹木も、草も陽光に輝いて、いっぱい酸素を吐き出している。

30年近く前、渓谷へ通いはじめたころ、地元の長老に教えられた。「ここは『五春』だよ」。梅、ハナモモ、アカヤシオ、ヤマザクラ、ソメイヨシノが時を重ねるようにして咲く。

それだけではない。木々の芽が吹いて、早緑色や臙脂色、黄色、薄茶色のグラデーションが広がる。梅の花はすでに散ったが、渓谷はまさに春の花盛り。

この日、「花見谷」にはひっきりなしに行楽客が訪れ、隠居の前の県道を行ったり来たりしながら花を楽しんでいた。

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