初めて食べたおかずだった。細切りにしたピーマンをレンジでチンし、「うま塩ピーマン」と書かれた粉末の調味料=写真=とごま油を和(あ)えただけだという。
「うま塩ピーマン」の袋には「町中華名店の裏メニュー」とある。鶏ガラスープパウダーその他が原材料で、最初の一口で驚いた。
これがピーマン? 弾力、つまり歯ごたえがあって、ピーマンとは別の食べ物のようだった。しかもピーマンの青臭さがない。「町中華名店の裏メニュー」とうたっているだけのことはある。
何度もピーマンの感触を思い出しながら、「あれは何かに似ている、何だろう」と考えていて、はたと気づいた。
海のクラゲ。鮮魚スーパーなどでクラゲの和え物を売っている。クラゲの、あのコリコリ感に近い。
「うま塩ピーマン」は、カミサンが女子会に参加した1人からもらった。中学校の同級生3人が毎月1回集まって、昼食を兼ねておしゃべりをする。私は毎回、会場までカミサンを送って行く。
女子会ではそれぞれ何かを持ち寄ってプレゼントし合っているようだ。食べ物が多い。「うま塩ピーマン」を持って来たのは、何年か前までスナックを経営していた人だ。私もよく知っている。
娘がフランスに住むという1人からは、南仏・地中海原産、カマルグの天日塩をもらったことがある。
「うま塩ピーマン」は大手食品メーカーが販売している。スーパーで売っているのかどうか、「今度スーパーへ行ったら探してみよう」とカミサンが言った。
それからほぼ半月後、たまたま入ったスーパーでそれらしい調味料を探す。と、「町中華の裏メニュー」という言葉はないが、似たような袋詰めの調味料があった。
前のときと同じようにして、ピーマンに和えたのが出てきた。辛い! 「うま塩ピーマン」とはかなり違う。ま、違いがわかっただけでもよしとするか。
調味料に限らないが、料理の世界は奥が深くて広い。底なし沼のようだ。若いころ、料理の沼にはまることはなかったが、それでもこだわってきたものがある。
ネギの栽培、原発事故の前はキノコの採集(今は菌類関係の本を読むだけ)、そして糠漬けと冬の白菜漬け。これらは自分の役目と決めている。
あとは「食べる人」(このごろは「片付けて洗う人」もやる)。そのなかで出合ったピーマン料理だった。調味料次第でこんなにも味が変わるのか、という驚きは新鮮だった。
そのへんがヒントになったのかもしれない。酸味が強くなった古い白菜漬けを再生させる方法として、市販の「キムチの素」をまぶすことを思いついた。
わが家に届く元シェフ製造のドレッシングも、好みの調味料ではある。調味料の沼にはまるのも悪くない。