日記は手書きと決めている。ノートではなくカード方式で、新聞に折り込まれる「お悔やみ情報」(チラシ=A4判コピー)の裏面を利用する。
先ごろ、県紙の販売店がこのチラシを廃止した。用紙が入らなくなった。が、これまでの分が残っている。ここしばらくは大丈夫だろう。
ふだんの日記のほかに、生物季節的な事象はあとで別の用紙にまとめておく。
特別な用紙ではない。若いときに特注し、未使用のままだった俳諧用の調査カードだ。死蔵するよりはまし、ということで始めた。「マイ歳時記」のようなものができれば御の字だ。
夏のシンボルはヤマユリ。私はそう思っている。7月12日の日曜日、隠居のある夏井川渓谷の手前、段丘の高崎地内で今年(2026年)初めて、野生のヤマユリの花を見た。その1週間後、渓谷は「ヤマユリ街道」になった。
ヤマユリはもちろん、チェックシートにも事細かく書き留めておく。併せて鳴き声を聞いたウグイスやガビチョウ(中国産のかごぬけ鳥)もシートに記録する。
渓谷を縫う県道小野四倉線は、茂った青葉で緑のトンネルになっている。その薄暗い県道のガードパイプに寄り添うように、ウバユリが咲いていた=写真上1。
東日本大震災の前は、隠居へ行くと必ず対岸に渡り、遊歩道を巡った。するとこの時期、緑陰の中で緑がかった白い花が横向きに咲いている。
冬は冬で、立ち枯れた茎の先端に蒴果が丸く膨らんでいる。これもまた凛々しい雰囲気をかもしていた。
ウバユリのことをすっかり忘れていた。県道の花を見て記憶がよみがえった。そのくらい森を巡っていないということだろう。
いやいや、花自体が地味で、あまり興味を引かないのも一因ではないか。日記には書き留めている。が、ブログには一言も出てこない。
逆に、夏も冬も毎回、気になってしようがない植物がある。平地の集落を流れる川岸で、バナナのような大きな葉を伸ばしている。
高崎に入る直前、「裏二ツ箭」から流れて来た加路川が夏井川に合流する。そばの県道には橋が架かり、その上流側にバショウらしい草本がある。
晩秋には枯れ、冬の間、ボロボロの枯れ草色になっていたのが、春を迎えて枯れ葉の間から新しい緑の葉をのぞかせ始めた。
と思ったら、どんどん緑が増え、今は長い羽のような葉をいっぱい伸ばしている=写真上2。
バショウは、和ジュロと違って野鳥由来とは考えにくい。だれかが植えたのだろうか。このバショウだけでも自然と人間、鳥と植物の交通について考えさせられる。渓谷までの沿道で見かける不思議の一つではある。これもチェックシートには事細かく記録する。