2026年7月18日土曜日

減る庭の土

                                
   これは今年(2026年)、急にそうなったということではない。庭の表土が少しずつ、少しずつ流れ、地中の玉砂利が現れてきた――そんな感じだ=写真。

ちょうど頭上から青柿が落ちてくる時期。車の屋根にボコボコ当たるので、そばの離れの跡に車を止めている。で、むき出しの地面に落ちた青柿も集めて写真を撮った。

梅雨に入って、たびたび雨が降る。すると、車の轍(わだち)を中心に水たまりができる。

家の東側には表の車道へと続く砂利の小道、西側には雨水を流すコンクリートの排水路。家の前の歩道には側溝があって、コンクリートの蓋で覆われている。庭の雨水は、雨樋とは別に、地面を伝って蓋のすき間に流れ込む。

土砂降りになった7月17日の朝、傘をさして様子を見る。庭は湖、庭の草地は中島、砂利道は二筋の川になっていた。

浸食・運搬・堆積の「川の3作用」は庭でも起きる。浸食されるのはもちろん「水源」である庭の土だ。

車のタイヤは土をえぐるだけでなく、草が生えるのを抑える。しかし、一方の草には土をとどめておく役割がある。

草が生えているところは少し土が盛り上がっているように見える。草は天然の土留めシートだ。

ある日、板状の土を持ち上げるようにしてヤブガラシが芽を出した。ほかのところでは芽だけが針のように突き出ている。同じ庭でも場所によって土の質が違う?

そこから、たまたま読んでいた本を思い出した。藤井一至著『土と生命の46億年史――土と進化の謎に迫る』(ブルーバック)。

「土とは岩石が崩壊して生成した砂や粘土と生物遺体に由来する腐植の混合物」と土の研究の第一人者はいう。

この定義に従えば、板状に結びついていた庭の土は、ほかの土よりは粘土分が多かったのだろう。

藤井さんは原発事故で汚染された農地の再生のために、大熊町の農地で土壌分析の協力をしている。それを新聞記事で知って、先日、以上のことを含めて、ブログに書いた。

ごく普通の家の庭でも、足元に目を凝らすと地球史にも通じる自然の不思議が見えてくる――。

ブログの文章はそこで終わっている。それからわずか2カ月。また庭の土について考えさせられた。

夏井川渓谷にある隠居の庭(とりわけ下の庭)も何十年という間に、表面の土が雨で流出したためか、埋め立てに使った砕石が露出するようになった。

 土の定義を当てはめれば、生物遺体の腐植量が少ないうえに、粘土や砂の流出が続いたために、埋まっていた砕石が露わになってきた、ということなのだろう。

マチ場のわが家の庭も原理は同じ。表土が減って、地固めに使った砕石が露出するようになった。そういうことらしい。

かといって、庭をコンクリートで覆うようなことはしない。土を買ってくるか、どこからかもらってくるか。いずれにしても「土不足」を補う必要がありそうだ。

2026年7月17日金曜日

路面の矢羽根

                         
 このところ急に目に付くようになった路面標示がある。青い色をしている。先端はとがっていて、やや太い。

 先日は、この標識を路面に塗装する現場を目撃した。後日、そこを通ると青い色の「矢印」があった=写真。

 そこは東日本国際大学がある鎌田山(平)のふもと、夏井川沿いの集落だ。南アジア系の留学生をたびたび見かける。

 留学生の足は徒歩か自転車だ。自転車に関する標示ではないか――。そう直感した。

マチへの行き帰り、車を運転していると、たびたびヒヤリとする。そのほとんどが自転車だ。

大学の近辺だけではない。わが行政区内でも南アジア系の若者たちが徒歩で、自転車で通りを行き交う。

マイルールの自転車もある。一度どころか、二度、三度と衝突事故を起こしそうになった。

それとは別に、国・県・市がサイクリングロードの整備に力を入れている。民間でもJRの駅を起点に、自転車で「まち走り」をする「時空散走」の動きが広がりつつある。

自転車の普及と同時に、自転車の安全通行やマナーの向上などが課題になっているのだろう。

折も折、私が常時利用している夏井川の堤防で、自転車通行のための整備工事が行われることになった。工事の内容は路面標示や一部防草シート設置などだという。

標示のひとつに「矢羽根」があった。もしかしたらこれか、あの太く青い矢印は! ネットで調べると、そうだった。新しい標識が路面に施されたワケがやっとわかった。

青い「矢羽根」は自転車が走る「走路」を意味する。先のとんがっている方が走る方向で、逆走はダメ、の意味でもある。

夏井川は県が管理するが、堤防上の自転車通行整備工事は市が担当するらしい。7月15日付の回覧で各隣組に市のチラシを配った。

それによると、工事範囲は国際大下から河口までで、うち2カ所が車両通行止めになる。

具体的には、①中神谷~下神谷=7月21~30日②塩~中神谷=7月27日~8月10日――で、私は、7月21日から8月10日までは堤防経由でマチから帰ることはできなくなる。

それはともかく、自転車の青い表示はまだ一般には知られていないのではないか。車道には白い自転車のマークと矢印を組み合わせた標示もある。これも周知のマークとは言い難い。

いわきには東日本大震災のあと、復興サイクリングロード「いわき七浜海道」が整備された。

防潮堤と既存の道路を組み合わせたもので、防潮堤には自転車通行空間であることを示す「ブルーライン」(青い線)が引かれている。

今回やっと白い自転車と矢印、青い矢羽根、青い線の意味がわかった。自転車通行位置の明示、ドライバーへの注意喚起が主な目的だが、自転車利用者もまた左側通行を守る必要がある。

青い矢羽根は車道と混在のエリアに引かれる。幅は75センチ以上、長さは150センチ以上だとか。わが生活圏ではなんといっても、留学生によく理解してもらう必要がある。

2026年7月16日木曜日

いらんことして!

                               
 なにか心に残る新聞記事があると、切り抜いて取っておく。アメリカとイスラエルのイラン空爆以来、トランプ大統領に関する切り抜きが増えた=写真。こちらは疑問と不安が深まるばかりだからだ。

 トランプ氏が初めて大統領に当選したとき、「背広を着た悪漢レスラー」の登場をイメージした。

ほんとうのレスラーではないが、背広のままリングに上がる――プロレスファンの間では、トランプ氏のプロレス好きは知られていた。

その実業家が大統領に就き、民主党のバイデン氏のあと、再びホワイトハウスの主になった。

大統領としても、実業家そのままの「ディール(取引)」で外交交渉をすると、メディアは伝える。

一方では奇襲もいとわない。ベネズエラに続いて、イランにも突然、牙をむいた。すると、ホルムズ海峡の封鎖を招いた。

エンタメのプロレスならわかる。少なくとも観客にはリングの荒事の被害は及ばない。ところが、現実の戦争となると、そうはいかない。

アメリカとイスラエルが仕掛けたイラン戦争で原油が高騰し、ガソリンや灯油のみならず、石油由来の製品の高騰・不足が起きた。

消費生活の現場だけではない。建材をはじめ、さまざまな業種に海峡封鎖の影響が出た。

戦争当事国を越えて、地球上すべての庶民の暮らしに影響が及んだことを、大統領はわかっているのだろうか。そこに思いが至らないのであれば、そのこと自体が問題だが。

イランとアメリカが戦争終結に向けて覚書を交わしたと思ったら、すぐまた戦いが再開した。

しかも、どちらも海峡を「再封鎖」するという。そのうえ、今度は米国も「通航料」を取ると言い出した。さすがにこれは、翌日には撤回した。このご都合主義、言葉の軽さも不安を募らせる。

悪漢レスラー並みの「マッチ・ポンプ」のような発言が繰り返される。プロレスと現実の政治をごっちゃにすることはないだろうと思いながらも、危なっかしくてしようがない。

6月7日の「笑点」がそのへんの庶民の不安を代弁していた。「お題」のひとつに「○○に乾杯」があった。

立川晴の輔は「世界平和に乾杯」と題して、その「心」を解いた。イランにひっかけて「トランプ大統領 いらんことすな!」。これには爆笑した。

80歳。私よりは2歳年長だ。アメリカの建国250年記念と自身の誕生日に絡めて、ホワイトハウスで格闘技イベントを開き、サッカーのワールドカップでは、主催者に電話を入れて自国の選手のレッドカードを棚上げにした。これも「いらんことすな!」だ。

「イスラム共和国日本」に至っては、「いらんこというな!」を通り越してあ然となった。

権威主義者は「公職に就くことで権力を固め、利益や富を得ます」(元ニューヨーク大学教授ルース・ベンギアットさん)。そのためには戦争も辞さない? まさかそんなことはないと思うのだが。

2026年7月15日水曜日

目玉だらけの黒いイモムシ

                                
   拙ブログのホームページの右側に「人気のある投稿」が載る。最近は過去記事が並ぶ。

7月9日までは2024年10月1日付の「翅が三角形の蛾」がトップだった(今は2番目)。

秋の夕方、庭で蛾が2匹、交尾していた。翅が三角形で、初めて見る蛾だった。写真データをパソコンに取り込み、自分のスケッチを見ながら検索するとセスジスズメだった。

 さらに調べを続けて、幼虫はサトイモやサツマイモの葉だけでなく、ヤブガラシの葉も食べることがわかった。

ブログでは、春から夏、庭で歯を磨きながらヤブガラシの芽を摘んでいること、さらにはセスジスズメの生態に触れたあと、蝶や蛾の翅の形や模様に引かれる話などを加えている。そのくだりを要約・再掲する

――セスジスズメの成虫を見て、庭に現れても不思議ではないと思ったのは、むろんヤブガラシが生え出て、生け垣につるをからめるからだが、交尾を終えたメスの産卵の仕方を知って、なるほどと感心した。

 メスは飛びながら、幼虫が食べる草、たとえばヤブガラシに卵を1個ずつ産みつける。卵は1週間ほどでかえり、葉を食べて成長し、土にもぐって最後の脱皮をしてさなぎになる。それで越冬し、5~6月に羽化して、夕方から夜にかけて活動する。

その生命のサイクルを、主の知らないうちに庭で繰り返していたのだろう。

成虫の翅の紋様と形が変わっている。ネットには、ハンググライダーのような翅、とあった。しかも翅の紋様は直線的だ。

 前にハグルマトモエが茶の間に現れたときにも、翅の紋様に驚き、興味を引かれた。セスジスズメも第一印象はそうだった。

昼間の蝶は、アオスジアゲハであれ、キアゲハであれ、だいたいは目撃して写真を撮ったり、調べたりしてきた。

蛾は、遭遇する機会が少ない。が、主に夜、飛び込んで来る。紋様がおもしろいものはやはり気になる――。

セスジスズメの幼虫も、もちろん見たことがなかった。ヤブガラシの芽むしりは7月半ばの今も続く。

9日も地面に目を凝らしていると、ヤブガラシの若芽のそばに、なにやら黒く細長い生き物が横たわっていた=写真。

イモムシである(右端が頭)。黒地に目玉模様をいっぱい付けていて、体長は8センチほどと大きい。

セスジスズメの成虫のときと同じように、すぐ写真を取り、体の色、模様を含めて検索を続けると、ほどなくわかった。なんとセスジスズメの幼虫ではないか。

 初夏のヤブガラシの芽、秋のセスジスズメの成虫とくれば、梅雨期に幼虫がヤブガラシを食べるために庭をはい回っていても不思議ではない。

芽むしりを続けても取り残しはある。夏、生け垣に絡まったヤブガラシの花を見ると後悔する。

が、幼虫を知った今はそれくらいでちょうどいい、むしろ「すまなかったなぁ」と声をかけてやりたいくらいだ。

黒地に白い横縞はまだだから最終幼齢ではない。もうちょっとヤブガラシの葉を食べてから土にもぐるのだろう。

2026年7月14日火曜日

やまゆり祭

                               
   先日(7月5日)、いわき駅前の「ほこみち」(歩行者利便増進道路=国道399号沿いの歩道)でプランターのヤマユリが開花しているのを見た。

ヤマユリは例年、夏井川渓谷の県道小野四倉線で開花を確認するのだが、今年(2026年)は偶然、街なかで最初の花に出合った。

プランターを設置したのはNPO法人「R399戸渡(とわだ)やまゆり会」で、ヤマユリを介した旧戸渡分校と皇室の縁を伝えるとともに、ヤマユリの栽培・普及を通して小川地区の国道399号沿いの地域振興を図ることを目的にしている。

それをブログに書き、夏井川渓谷も7月中旬には「ヤマユリ街道」になることを付け加えた。

 街なかでヤマユリの花を見てから1週間後の7月12日、渓谷にある隠居まで開花の有無をチェックしたら――。

 平地を過ぎて段丘の高崎に入ると、谷側のガードレールにかぶさるようにヤマユリの花が咲いていた=写真上1。野生のヤマユリとしては、これが今年初めての花だ。

 その先、上小川トンネルと接続する磐城街道高崎踏切を過ぎ、地獄坂を上って渓谷に入る。

江田駅前を通過し、椚平(くぬぎだいら)、そして牛小川の集落へと至る途中、ガードパイプに沿って、点々とヤマユリの白い花が咲いていた。

合計すると、十数輪。白いつぼみもあったから、今週(7月第3週)は文字通り「ヤマユリ街道」になることだろう。

 12日には戸渡やまゆり会が国道399号沿いの事務所で「戸渡やまゆり祭」を開催した。

降ったりやんだりの曇雨天である。隠居での土いじりを早めに切り上げ、祭り開始時刻の午前10時には会場へ着いた。

一帯は二ツ箭山登山口駐車場の少し手前、いうならば同じ山の中腹(国道399号沿い)にある。つまりは坂の途中だ。

用意された駐車場からやや下手の会場を見ると、少し霧がかかっているようだった=写真上2。

事務所のそば、国道沿いにあるヤマユリ畑はほぼ満開だった。会場はその地続きの空き地といってよい。

ヤマユリは予約販売なので見るだけにして、物販のテントをのぞいていると、主催者の一人が寄って来て、「近くで栽培しているニンジン。葉っぱも刻んでてんぷらにするとうまい。ブルーベリーも安いよ」という。ニンジンとブルーベリーを買った。

 早々と駆けつけ、早々と会場を後にして街に下り、カミサンの用事でハマを巡った。平地の道路にはヤブカンゾウのオレンジ色はあったが、ヤマユリの白い花はなかった。名前の通り、ヤマユリは「山のユリ」。それを実感するドライブになった。

2026年7月13日月曜日

シュレーゲルアオガエル

                                
   シュレーゲルアオガエルというカエルが日本にいることを知ったのは17年前。夏井川渓谷に住む知人から連絡があった。「モリアオガエルが卵を産んだ」

そこから話が始まる(ただし、親のシュレちゃんを見たことはない。シュレちゃんという前提で書く)。

 モリアオガエルは、繁殖地として国の天然記念物に指定されている川内村の平伏(へぶす)沼が有名だ。草野心平と川内村を結びつけたのも、このモリアオガエルである。

 ふるさと小川の隣村・川内村にあるというモリアオガエルの生息地を一度訪ねてみたい――。

昭和24(1949)年2月1日付の読売新聞福島県版に載った心平のエッセーに反応して、村の長福寺の坊さんが心平に誘いの手紙を書いた。これがきっかけで、やがて天山文庫ができる。

今年(2026年)は天山文庫設立60周年の節目の年で、いわき市立草野心平記念文学館では企画展「草野心平と川内村」が開かれた。

いわき地域学會が『川内村史』の編纂事業を引き受け、私も執筆者の一人として、「幕末の川内の文芸」と「川内と草野心平」を担当した。

それもあって、平伏沼へは何度も足を運んだ。繁殖期には沼にせり出した木々の枝に白い卵塊がいっぱい付いていた。

ある年には沼の水が涸れ、水を張った発泡スチロールの箱を卵塊の下に置いているのを見たことがある。お年寄りが「オタマジャクシ番」をしていた。

平伏沼だけでなく、国道399号沿いの小さな沼地で、樹上にモリアオガエルの白い卵塊が産み付けられているのを何度か見た。

その経験からすると、地べたに近い幼木の卵塊は少し奇異に映った。しかも、そばには小さな水田があるだけだ。

モリアオガエルが地べたに産卵するとは聞いたことがない。卵塊の写真を撮り、ネットで検索すると、シュレーゲルアオガエルという別種のアオガエルがいることがわかった。そのときのブログを要約・再掲する。

――モリアオガエルは木の上にソフトボール大の卵塊を産みつける。こちらの卵塊は平板だ。

シュレーゲルアオガエルは水田や森林に棲むという。つまり、モリアオガエルと同じ森のカエルだ。

アオガエルというくらいだから、両者はよく似る。繁殖期になると水田や湿地の地面・草むらなどに卵塊を産みつける。モリアオガエルが樹上派なのに対して、シュレちゃんは地上派だ。そこが違う――。

今度は知人の家の庭の置物の間に産卵した。下には何もない。そこで知人は卵塊を庭の低木に移し替え、下に水を張ったバケツを置いた。私が見たときには、卵塊は古くなったのか、色がかなり濁っていた=写真。

オタマジャクシが生まれ、バケツの中で泳ぎ出したのはいいが、すぐ消えるという。平伏沼ではイモリが天敵だ。沼地のない渓谷では、捕食者は……?

隣の集落でも「モリアオガエルが卵を……」となった。地上派らしいから、モリ君ではなく、シュレちゃんではないか。私はそう思っている。

2026年7月11日土曜日

キノコの発生地研究

                                               
   今年(2026年)の4月に区切りの会報第30号が発行された。それを機に、いわきキノコ同好会は解散した。

解散を決めた総会から季節がひとつ巡った去年4月、冨田武子会長が亡くなった。突然の訃報だった。

第30号は会長追悼号を兼ねることになり、私は冨田会長との思い出を主に、ブログを選んで寄稿した。

「福島きのこの会」の会長でもある阿武武さん(石川町)は、「いわきキノコ同好会のこと」と題して、同会の30年の歴史を振り返った。それとは別に、訃報に接したあと、冨田会長の業績記録を取りまとめて寄稿した。

阿部さんは令和7(2025)年12月、自身20冊目の出版物である『福島のキノコと裏磐梯の森』をまとめ、県内の図書館に寄贈した。

7月1日付の県紙で知り、いわき総合図書館にあるのを確認して、借りて読んでいる=写真。いわきキノコ同好会の会報に発表した論考などが収録されている。

阿部さんとはいわきのキノコの観察会、総会兼勉強会で何度か顔を合わせた。2018年9月、私が小川町の山中で撮影・採取したアカイカタケについては、直接、電話や手紙をもらった。

 それで、アカイカタケは福島県内にも関東にも記録がない、非常に珍しいキノコであることを知った。

そんなことを思い出していたときに目に留まった、ショッキングなニュースである(7月7日付朝日新聞)。

中国は武漢でのキノコ食中毒事故である。両親と山を訪れた9歳の少年が食菌とよく似た野生のキノコを採った。

「AIアプリが『毒はない』と判定した」ために調理して食べたら、「直後に嘔吐などの症状が現れ、急性肝不全などの合併症を引き起こした。病院の集中治療室に運ばれ、一時危篤状態に陥り、8日間入院した」という。

キノコは変異が多い。食用キノコか、毒キノコかは専門家でも難しい場合がある。その判断をAIにゆだねた? そんなことが可能なのか。

 キノコ同好会では観察会のあと、必ず鑑定会を開いた。参加者の採取したキノコがテーブルの上に置かれる。冨田会長らが1つひとつ見て回る。

同定に合わせて「食不適」「毒」「食毒不明」などと用紙に書き込まれる。種類の同定がつかないものもある。

同好会に入ったのは食欲のためだが、観察会・鑑定会と年末の勉強会を重ねるうちに、キノコの世界の奥深さを知った。

キノコは、色が多彩で形も多様。そのうえ、人知れず発生しては姿を消すものが多い。まだまだ未解明な世界だ。AIで食毒が判定できるのは、いわばほんの一部でしかない。

現場での学習、先輩からの助言、それでも危なっかしいものは食べない、そういう経験を重ねた人間からすると、食毒をいとも簡単にAIにゆだねるのは安易、いや危険すぎる。

 AIアプリを使ったのは、親か子どもかは定かではない。が、AI頼りのキノコ狩りは命にかかわるだけにやるべきではないだろう。阿部さんもこのニュースには危惧を抱いたのではないか。