いわき地域学會が発足したのは1984(昭和59)年秋。私も誘われて入会した。
その3年後、会員を執筆メンバーに、私が勤めるいわき民報でいわき市内を流れる夏井川、鮫川、藤原川の「流域紀行」を連載した。
続いて、水源の「あぶくま紀行」、河口=沿岸部の「浜紀行」も手がけた。これらはいずれも単行本になった。
いわきは広い。広いいわきをてのひらにのせて語れるような方法はないものか――。ゴルフ場とごみ処分場の建設計画が持ち上がり、水環境問題が起きたとき、いわきを「行政区域」ではなく「流域」で見ることを提案した。
いわきは、大きくは夏井川(北部)・藤原川(中部)・鮫川(南部)の三つの流域からなる(便宜上、大久川や仁井田川ほかの河川は3流域の一部として扱った)。そこに人口が密集した平・小名浜・勿来の3極がある。
それぞれの流域にはハマ・マチ・ヤマがある。3極3層の地域構造。それを、わかりやすく、総合的にエッセーとして紹介しよう、いわきを深く考えるテキストをつくろう、という狙いで「いわき5部作」ができた。
その後、東日本大震災に伴う1Fの原発事故でも、風だけでなく水(川)の視点が必要になった。平成の時代が終わり、令和に入ると、今度は水害問題が起きた。
2019(令和元)年10月、台風19号がいわき市を直撃し、支流の好間川・新川を含む夏井川水系に大きな被害が出た。
2023(令和5)年9月には線状降水帯が大雨をもたらし、主に新川流域の内郷地区で床上・床下浸水が相次いだ。
令和元年東日本台風の甚大な被害などを踏まえ、国交省は「流域治水」の考えを打ち出した。
堤防整備、ダム建設・再生などの対策をより一層加速するとともに、集水域から氾濫域にわたる流域のあらゆる関係者で水災害対策を推進する、というものだ。
行政区の役員に就くと、充(あ)て職で夏井川水系河川改良促進期成同盟会のメンバーになった。
平成から令和へ、河川行政への要望活動がいちだんと強まった。それだけではない。先ごろ開かれた定時総会で組織の拡充が決まった。
具体的には、内郷地区(新川・宮川流域)の行政区が新たにメンバーに加わったのである。
総会ではそのための議案などが提案された=写真。歴史のある期成同盟会としては珍しいことだろう。
行政区の年会費も併せて見直し、世帯数が100未満は1500円、100以上は3000円と、それぞれ500、1000円減額された。これも珍しいことにはちがいない。
土地改良区を除く行政区は、これまで平・小川・好間の51区だったのが、内郷の32区を加えて83区に拡大した。
地球温暖化に伴い自然災害の規模が甚大化しつつある。それを物語る組織拡充ではある。