「チェックシート」といっても、決まった書式があって、紙に印刷されている、といったものではない。私の頭の中にあるだけだ。
たとえば、マチへ行った帰りに夏井川の堤防を通って、川と河川敷をチェックする。なにか変わったことがあれば、家に帰って「日記」に書き留めておく。
現役のころは取材用の「メモ帳」をいつも携帯していた。会社をやめたあとは、メモ帳ではなく、自分の日常をA4判の「カード」にメモしている。つまりは日記。それを参考にしてキーワードを選び、毎日ブログ用の原稿を書く。
カードといっても、新聞に折り込まれる「お悔やみ情報」の裏面にすぎない。たいていは片面コピーなので、裏面をメモ用紙として利用できる。
チェックする項目は季節によって異なる。時系列でいうと、冬は新川合流部に飛来するハクチョウの概数、春は岸辺のヤナギの芽吹きやツバメの飛来日、夏はオオヨシキリの初飛来、田んぼに水を取られてできた「川中島」の様子、秋はサケのヤナ場の設置など。
ほかに、住宅地と堤防の間にある畑、たとえば真冬に収穫するネギの定植時期や土寄せの様子などをチェックする。
日曜日に夏井川渓谷の隠居で土いじりをする。夏井川の源流部・田村地方から渓谷へ伝播した「三春ネギ」を栽培している。その作業の参考にする。
隠居までの行き帰り、隠居に着いたあともチェックを欠かさない。平地の三島には残留コハクチョウの「エリー」がいる。二ツ箭山のスカイラインも必ず眺める。
谷間に響くガビチョウやウグイスのさえずりはもちろん、春のアカヤシオ、初夏のコバノトネリコの花、秋の紅葉、冬の落葉なども書き留める。
絶えず流動し変化してやまない自然を、自分の目と耳で感じとる。その経験と記録が積み重なって、頭にしかないチェックシートができあがる。
といっても、ふだんは忘れている。堤防に出たとき、渓谷への道行きなどに、季節に応じて記憶がよみがえる。
「ハクチョウは来たかな」「ネギの収穫は始まったかな」「おや、今年最初のツバメだぞ」などと、頭の中で絶えず生物季節情報と現実が交差する。
今のところ現実の「カード」(日記)は雑記にすぎない。が、これを整理し、動植物、気象その他、テーマや季節ごとに再構成すると、何か見えてくるものがあるかもしれない。
それにぴったりの用紙があった。専称寺(平)で修行した江戸時代の俳僧一具庵一具を調べるために、若いころ、調査カードを特注した=写真。死蔵したままになっている。これを活用しよう。
俳句の「歳時記」と同じで、メモはこれまで通りだが、「自然」の情報をそこから抽出すれば現実のチェックシートになり、「マイ歳時記」として再構成できる。
とにかく試してみる価値はありそうだ。なにか不備があればそのときまた考えればいい。
せっかくつくったのに何十年も使わずにいた用紙の救済にもなる。モノは使い切る、これが一番だから。