カミサンのアッシー君をして、いわき市暮らしの伝承郷を訪ねた。開催中の企画展「いわきの民俗芸能」は前に見ている。カミサンの用がすむまで館内で待つことにした。
ロビーに七夕飾りがあった。そばの壁面には何枚かに分けて七夕の起源やいわきの七夕祭り、七夕がらみの人と水の関係、なかでも機織り伝説などを解説する文章が張られていた=写真。
それに関連して、いわきの伝説を3つ紹介している。鮫川の「御前淵(ごぜんぶち)」(勿来地区)、夏井川渓谷の「籠場の滝」、そして沼ノ内の「弁天沼」である。
「籠場の滝」の伝説と七夕の風習がどうつながるのか? ここはじっくり読んでみなければ、という気になった。
「籠場の滝」は渓谷の隠居の手前にある。毎日曜日、そばの県道を通る。車から必ず滝の水量と勢いを確かめる。
地元の古老によると、「籠場の滝」の「籠」は、「磐城平藩の殿様の籠」ではなく、「魚止めの滝の籠漁」からきている。その話を聞いたとき、頭の霧がサッと晴れたような気がした。
そのことに触れているかどうか。まずは解説文をチェックする。「殿様が籠から降りて滝に見とれた」という説のほかに、「滝つぼに大きな籠をしかけて魚をとっていたことに由来する説」もあることを付け加えていた。
調べがアップデート(知識の最新化)されているのに安心した。以下は、解説文を下敷きにしている。
日本では、機織りは女性の重要な仕事だった。機織りの技術は信仰とも結びつき、日本に中国由来の七夕文化が定着するきっかけにもなった。
昔は、年中行事は旧暦で行われていた。新暦では季節感などとずれることから、七夕は旧暦に近い8月の6~8日、お盆は13~15日に行われている。
水の中から機織りの音が聞こえる、水底(みなそこ)に機織りをする女性がいる――この「機織り伝説」は、養蚕との関連が指摘されている。
福島県から宮城県を中心とした阿武隈川沿いの地域と、長野県を中心とした地域に機織り伝説が集中している。これらの地域には養蚕が盛んなところが含まれている。
養蚕にはきれいな水が必要だった。養蚕が盛んな地域では沼や淵が神聖な場所として重要視され、七夕伝説と結びついた可能性があるという。そうしたことを踏まえて、水に絡んだいわきの伝説が紹介される。
「御前淵」では、青年が淵に鉈(なた)を落とす。「籠場の滝」では、長者・江田の伴四郎が脇差を滝つぼに落とす。「弁天様」では、木こりが沼にマサカリを落とす。
それを取りに潜った青年(御前淵)、若者(籠場の滝)、木こり(弁天沼)が見たものは――。
淵の底で機織りをするお姫様(御前淵)であり、水中の御殿(籠場の滝)であり、御殿で三味線や琴を引く弁天様(弁天沼)だった。
七夕にまつわる昔話をひも解くことは、人と水との関係を追求する手がかりとなりうる、という。(折から「いわき七夕まつり」が開かれている。なにかの参考になれば)