阿武隈の山里で生まれ育った。中学校へは3つの小学校から生徒が集まった。いわゆる団塊の世代で、1学年は5クラスに膨らんだ。
今思うと、町の小学校3クラスに在の小学校各1クラスが加わって、同級生の数が一気に増えたのだ。
集団就職から高校進学が普通になりつつある時代、私は開校して3年目の平高専(現福島高専)に入った。
それを機に、いわきに根を生やした。同じようにいわきに住む中学校の同級生が何人かいる。
年に1回は田町(平)に繰り出し、ミニ同級会を楽しんだが、震災後は集まりが途絶えた。
近所に住む同級生は中学校で一緒になった。有限会社を営んでいる。建築業、つまりは大工さんである。
彼に頼んで夏井川渓谷にある隠居の台所を改造し、少し外に張り出した縁側を幅1.5メートルほどの濡れ縁に作り替えた。
職業柄、寺を巡り、仏像を見る機会が多かった。それだけではない。若いころ、自分の生き方に悩んで仏教に傾倒した。
家をつくっても寿命は50~60年ぐらい。自分の手がけた作品(建物)は結局、この世には残らない。
それに比べたら、仏像は何世紀も生き伸びる。仏像に魅かれて仏画に取り組むようになった。
結婚すると趣味の写仏を封印して仕事に励んだ。時は過ぎ、いつの間にか後期高齢者になった。
2年ほど前、脊椎を傷めて会社を休眠させた。一線から退くと時間が余った。若いときの趣味だった仏画への情熱がよみがえり、写仏を再開した。
先日、彼から封書が届いた。突然の連絡である。最初は廃業のあいさつかと思ったが、違った。
チラシが同封されていた。「松本守雄仏画展――千年の祈り・その色彩」とあった=写真。なんと個展の案内ではないか。
いつ、どこで? これにも驚いた。いわき市暮らしの伝承郷で、10月8日から12日までの5日間開催する。
伝承郷のスタッフには顔なじみが多い。カミサンが同施設の事業懇談会の委員をしている。
アッシー君を務めるついでに企画展をのぞいたり、園内の古民家を巡ったりする。それで学芸員氏とも知り合いになった。
チラシを見たあと、すぐ同級生に電話を入れた。すると翌朝、軸装された仏画その他を持って来て、個展を開くまでの経緯と仏画の手法を説明してくれた。
写仏は写経と同じで、印刷された仏様の上に紙ないし絵絹を重ね、筆でなぞって彩色する(同級生は絵絹を使う)。
展示する作品は①仏画22幅②色紙24点③四国八十八カ所御朱印掛軸のほか、愛蔵する郷土作家3人(大平華泉・若松光一郎・坂本勇)の作品で、仏画などにはフロアから自作の照明器具で光を当てるという。
写仏を始めたきっかけは前述の通りだが、仕事と写仏を介して軸装を頼んだ画材店や寺、遠野和紙芸術文化研究会などとつながり、協力を得た。
いわば、人生第二のステージである。写仏を通して心を落ち着かせるいい時間の過ごし方を手に入れたものだ。ぜひご高覧を。