2014年6月27日金曜日

ヤマユリのつぼみ

「きょうはどちらへ」。日曜日の夕方、いつもの魚屋さんへカツオの刺し身を買いに行くと、決まって若だんなに聞かれる。「ヤマ(夏井川渓谷)へ行ってきた」がほとんどだが、「地域で行事が」「街で集まりが」というときもある。

 6月22日の日曜日は、そのヤマ(渓谷)からの帰りだった。山の緑とヤマユリの話になった。ちょうど渓谷で写真を撮ったばかりなので、「今はまだ大人の手の小指くらい、葉と同じ緑色をしている」=写真=という話をした。

 若だんなは、夏になると家族でよく川内村へ出かけたものだという。ヤマユリがきれいだった。いい香りを放っていた。娘が生まれたとき、ヤマユリにちなむ名を付けた。「百合」ではない漢字を当てた。そうだった。忘れていたが、若だんなは川内の東隣、富岡町に住んでいた。今は実家に“単身赴任”の身。家族は首都圏に避難している。

 阿武隈の山々では、学校の夏休みが始まるころ、ヤマユリが咲きだす。ちょうど梅雨が明ける時期でもある。小指大の緑のつぼみはこれから1カ月ほどかけて肥大し、白くなって六裂する。
 
 阿武隈の子どもたちにとって、ヤマユリは夏休みの昆虫採集と結びついた花だ。青空に入道雲がわき、道端にヤマユリが咲いて強烈な香りをまき散らしている――双葉郡の避難民にとってもそれは同じだろう。見たくても見られない、恋しいだけの花になった、という人もいよう。

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