2013年10月1日火曜日

阿部幸洋新作油彩展

スペイン中部のラ・マンチャ地方、トメジョーソに住む画家阿部幸洋の新作油彩展が10月7日まで、いわき市平の小野美術で開かれている=写真

9月20日未明、帰国していわき市平の実家に着いて間もなく、震度5強の大きな地震に見舞われた。その約1時間後に、阿部が若いときに世話になった元草野美術ホールオーナーの草野健さんが95歳で亡くなった。

草野さんは阿部の仲人でもある。告別式の謝辞のなかで、喪主が「阿部さんの帰りを待っていたかのように……」と述べるほど、草野さんと一世代下の阿部の関係は密だった。

そんなあわただしいなかで始まった個展だが、全体としてはラ・マンチャ地方の風景(建物・平原)や壺などの静物を描いたものが中心、それに裸体画が少々といった構成だ。37点が展示されている。

写真の作品の前で足が止まった。天上から見下ろすような視点を想像して建物を描いたという。ほかの作品と違って、遠近感が解き放たれている。昔から阿部の作品を見つめてきた一人として感ずるのは、絶えず何か自分にテーマを課して作品を深化させてきたことだ。これもその一つで、抽象度を上げる試みが始まったか。

最初、4年前に亡くなった妻すみえさんもこうしてトメジョーソの町を見ているのだと思ったが、それは感情的に過ぎるというものだ。しかし、阿部の個展にはやはりすみえさんが寄り添っている。そう思わずにはいられない。きのう(9月30日)は彼女の命日だった。

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