2014年3月2日日曜日

哀悼

 2月25日にフラメンコギター奏者のパコ・デ・ルシアが、同28日に詩人のまど・みちおさん=写真(2010年1月3日、NHKスペシャル)=が亡くなった。パコは享年66、まどさん104。まどさんの場合は101歳で亡くなった柴田トヨさんを上回る、世界最高齢?の詩人の死だった。

 パコとまどさんには、むろんつながりはない。が、私のなかでは一時、夢中になって聴いたり、調べたりした、ということでは同じ琴線上にある。

 20代半ばで初めて、同世代のパコの「二筋の川」を聞いた。フラメンコギター奏者が他ジャンル(ルンバ)のメロディーを切れ味よく演奏している。どんな指の動きをしてるのか――家に帰れば幼子を相手にアコースティックギターをいじる身には、非常な驚きだった。

 刺激を受けて、ライブアルバム「フライデー・ナイト・イン・サンフランシスコ」を買った。パコと「スーパー・ギター・トリオ」を組んだアル・ディ・メオラ、ジョン・マクラフリンを初めて知った。
 
 その後、ギターとレコード(今はCD)から遠のいた。孫が来たとき、たまにギターを引っ張り出すくらいになった。孫は共鳴板の穴にピックを入れたがり、こちらはそうはさせまいと手で穴をふさぐ。その攻防が楽しいらしい。そうそう、孫が2歳のころ、まどさんの「ぞうさん」(團伊久磨作曲)を弾いたら、言葉にはならないがハミングした。保育園で聞いているということだった。

 まどさんの生涯は童謡史に重なる。孫のおかげで、まどさんと「アンパンマン」の生みの親・やなせたかしさん(1919~2013年)について調べ、常磐にある野口雨情記念湯本温泉童謡館で報告したこともある。

 まどさんが青春時代を過ごした台湾を同級生と旅したときには、作品に出てくる鳥「ペタコ」(シロガシラ)に遭遇した。台湾映画の傑作「非情城市」の舞台になった九份でのことだった。日本の鳥でいえばヒヨドリに似る。和名のとおり頭が白い。

 まどさんの詩「蕃柘榴(ばんざくろ)が落ちるのだ」に〈どこからかペタコもやってきて/ぴろっ、ぴろっ、と啼いては/黄色い玉を/ぽとり、ぽとり、落とすのだ〉とある。黄色い玉は蕃柘榴(グァバ)のことだという。
 
 ネットで「二筋の川」を繰り返し聴き、台湾のペタコを思い出して、2人にささやかながら哀悼の意をささげた。

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