2014年4月20日日曜日

ギョウジャニンニク

 第一印象は、スズランの葉に似てるなぁ、だった。野草図鑑や山菜図鑑ではなじんでいたが、現物を見るのは初めてだ。ギョウジャニンニク=写真。一度は食べたいと思っていた山菜だ。

 近所に原発事故で双葉郡から避難してきた老夫婦がいる。奥さんがわが家(米屋)へ買い物に来て、いつのまにかカミサンと仲良くなった。このごろは、「これ、つくったから」と煮物や漬物を持ってくる。近くの直売所で買った野菜も持ってくる。パック入りのギョウジャニンニクも、きんぴらごぼうと一緒に届いた。

 老いれば食が細くなる。塩ザケは切り身の半分でいい。2人分の料理のつもりでも、余ることが多くなった。それと同じ理由で、こちらにおかずが回ってくるようになったのだろう。

 まるで高度経済成長前、昭和30年代前半の世界に戻ったような感じだ。隣人関係が濃密で、醤油の貸し借り、もらい風呂が普通だった半世紀前の光景がよみがえる。
 
 そうそう、去年の秋には「あれば、一かけらを」と、カミサンがニンニクをもらいに走った。カツオの刺し身を買ってきたのはいいが、ニンニクを切らしていた。

 ギョウジャニンニクは、いわきには自生しない。栽培物だろう。おひたしとてんぷらにした。まず、おひたし。ニラの味、食感に似る。てんぷらも同じだ。

 ギョウジャニンニクとニラを交配させた「行者菜」というものがある。ネット上の写真を見るかぎりでは、ニラそっくりだ。目の前のギョウジャニンニクは根元が白く、茎が赤い。行者菜ではない。

 ギョウジャニンニクは、彼女と出会わなかったら、たぶん永久に食べられなかった。その意味では、新しい“口福”をもたらしてくれる隣人だ。早朝、こちらがまだパジャマでいるころ、「おはようございます」と玄関の戸が開く。これだけは“想定外”だったが。

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