2014年5月7日水曜日

岸辺のシロヤシオ

 その木が白い花のドレスをまとっているのを見たのは、震災後、初めてだ。夏井川渓谷の岸辺に1本、水面を覆うように枝を垂らしている。花の数の多さは、溪谷で随一といってもいい。

 4月のアカヤシオ(イワツツジ)の花が散り、V字谷を若葉が染める5月初旬、点々と斜面にシロヤシオ(ゴヨウツツジ)の花が咲く。毎年咲くとは限らない。咲いてもチラホラの年がある。今年は、花は例年より目立つほうだろう。

 そのシロヤシオは、渓谷を走る県道小野四倉線の対岸にある=写真。木々の若葉にさえぎられて、県道からはよく見えない。対岸の遊歩道からも若葉と岩盤に隠れて見えない。

 ちゃんと写真を撮ろうと思ったら、ガードレールをまたいで急斜面を下り、岸辺の岩場に出ることだ。そうして写真を撮ったのは、もう15年以上も前だろうか。

 日曜日(5月4日)、近くにある隠居(無量庵)で土いじりをした帰り、思い出して木の間越しにそのシロヤシオを見たら、満開だった。急斜面を下りる体力はないので、県道を行ったり来たりしては、かがんだり、立ったりしながら、花の全体が見えるところを探したが、そんな都合のいいスポットはない。

 はいつくばるようにガードレールのすきまからパチリとやり、トリミングをしたのがこの1枚だ。時折、通る車の運転手は、路肩で体をねじ曲げるようにしてかがんでいる男女に、「なにやってんだ、この2人は」と首をかしげたことだろう。何年かに一度目を奪われ、心が吸い寄せられる木ではある。

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