2014年5月9日金曜日

入館50万1人目

 いわき市立草野心平記念文学館で、新年度最初の企画展「草野心平の詩 富士山編」が開かれている。開幕して2日目の日曜日(4月20日)に出かけた。8ページのパンフレットをめくりながら、「カエルの詩人」は「富士山の詩人」でもあることを、あらためて感じた=写真。
 
 パンフに「富士山 作品第肆(し)」は載っていなかったが、春のうららかな日にはときどき耳底に響く。<川面(づら)に春の光りはまぶしく溢(あふ)れ。……花環が円を描くとそのなかに富士がはひる。その度に富士は近づき。とほくに坐る。……耳には行行子(よしきり)。頬にはひかり。>

 2013年6月、富士山が世界文化遺産に登録された。そのことも企画展開催の動機になったか。

 大型連休最終日の5月6日、同文学館の入館者が平成10(1998)年7月の開館以来、50万人に達した。夜のローカルニュースを見て、カミサンが声をあげた。記念すべき50万人の入館者の隣に、知っている女性がいた。50万人目の男性の奥さんだった。
 
 4月7日、小学校の入学式に学区内の区長と民生委員らが臨席した。そのあと、場所を変えて両者の合同懇親会が開かれた。奥さんは民生委員の1人だった。
 
 自己紹介の言葉が忘れられない。よそから嫁いで長いが、いまひとつ地域にとけこめないでいた、地域のために何か役立ちたい、それで民生委員を引き受けた、と。そんな思いで地域と向き合っている人は少ない。こういう人を行政区の役員に迎えたいものだが……現実には欠員を埋められないでいる。

 夫が50万人目、本人は50万1人目。前後賞ではないが、50万1人目というのも乙ではないか。企画展のパンフに「メデタシ目出度しめでた志」と文字の入った富士山の絵が載っている。地域のために手をあげたからこそ、めでたいことが巡ってきたのだと、私は勝手に解釈している。

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