いわき駅前再開発ビル「ラトブ」の総合図書館は、月ごとにテーマを決めて展示コーナーに本を飾る。10月は4階が「秋の夜長の極上エッセイ」、5階が「10月15日は『きのこの日』」だ。
先日、山本美穂編『しいたけと3・11』(新泉社、2026年)を借りた=写真。サブタイトルは「福島原発事故が森林の恵みに与えた影響」である。
福島県内では浜通りと中通りを中心に、野生キノコの摂取と出荷が制限されている。
事故から15年がたって、一部規制が緩和された。野生のマツタケ、ナメコ、ナラタケ、ムキタケ、クリタケに関しては、県の非破壊検査で基準値(キロ当たり100ベクレル)を超えなければ出荷が可能になった。
シイタケが被った影響については、拙ブログでも取り上げている。2020年1月、東京新聞が「広葉樹の里山で人は 福島・阿武隈」を連載した。感想を述べながら、記事の中身を紹介した。それを要約・再掲する
――原発事故まで福島県の阿武隈山地は、シイタケ栽培用原木生産の日本の一大拠点で、シイタケ生産も盛んだった。
事故から9年、里山で栽培する原木やシイタケは放射能の影響で生産が滞ったままだ。
事故前の年間出荷量は阿武隈の木を中心に約20万本。今は約8分の1に減り、大半は県南西部の南会津町産だ。切り出してそのまま基準値を下回る阿武隈の木はまだ少ない。
歴史の長いシイタケ原木栽培を断ち切るまいと、みずから厳しい自己基準を設けて奮闘している原木供給業者もいる――。
それから2年近くたって、長編ドキュメンタリー映画「失われた春
シイタケの教え」を見た。そのときのブログも一部、紹介する。
――監督の写真家田嶋雅巳さんは7年の歳月をかけて、放射能汚染と向き合う阿武隈の原木シイタケ栽培農家と、原木を伐採して出荷する林家の日常を追った。この映画の撮影のために阿武隈の山里に近い郡山市に移り住んだという。
阿武隈の里山はクヌギやコナラを中心にした雑木山だ。高度経済成長期の前は、25年前後の周期でこれらの木を伐採し、マキや木炭にした。
切り株にはひこばえが伸びる。山の持ち主はこれを育て、また25年ほどたってマキや木炭にした。木の生命力を生かした循環型の燃料調達システムだった――。
『しいたけと3・11』は、事故後の影響を詳細に伝える。ほかに、金銭換算が容易でない部分で見えない被害が出ていることを指摘する。
たとえば、岩手県。地元産の原木が利用不可能になったが、統計的に明らかにすることができないでいる。原発事故にはこうした見えない被害がかなりある。
この見えない被害は市民のキノコ狩りにも及ぶ。3・11以来、愛菌家はキノコを採って食べる楽しみを奪われた。
損害を数値化できないので、裁判はできないと、知り合いの弁護士に言われた。原発事故で市民は今も「自然享受権」を断たれたままでいる。本を読み終えて、あらためてそのことを思った。