干し柿をつくっている、というのは正確ではない。干し柿ができるのを待っている、というべきか。
庭に落ちていた渋柿の皮をむき、軒下につるすのではなく、屋内で浅いざる(直径47センチ)に置く。手抜きでも干し柿はできるのではないか、とひらめいた。
これは、そうして「置き干し柿」を始めてから1カ月近い「中間報告」でもある。
ざるは2階の窓際に置いた。それが11月11日。以来毎朝、様子を見に行く。最初の1週間はこんな具合だった(11月18日のブログから)。
――ちょっとした振動、たとえば地震、あるいは家の前の道路を大型車が通ると、すぐコロリとなる。で、毎日、置き場所を探りながら並べ直す。
揺れを感じなかった日でも、なにかが影響するのか、1個か2個はコロリとなっている。
小さな泡を吹いている傷口もあった。果肉がとろけそうになっている。これがざるにくっつくと厄介だ。
ざるも時々、半回転させる。曇りガラス越しとはいえ、光がまんべんなく当たるようにする――。
柿がコロリとなるのは、振動もあるのだろうが、柿自身の変化が原因かもしれない。
というのは、水分が抜けるにつれて、柿はやわらかくなる。すると重力の影響か、ひしゃげるように変形したものが出てくる。それでバランスを崩すのではないか。
簡単にいうと、しっかりした円錐形がつぶれた台形、あるいは先端がひしゃげたとんがり帽子のようになる。
それで絶えず11個の柿を、ざるの角度に合わせながら並べ替える。ざるもときどき回転させる。
干し始めて10日もたつと、かなりやわらかくなってきたので、もんで形を整えた。そうすることでバランスもよくなる。
月が替わり、師走を迎えたころには、倒れる柿はなくなった。色も朱赤色から茶黒っぽく変色してきた。ここまでくると、もう仕上げを待つばかりだ。
12月4日朝、家が揺れた。最初ドンとなってグラグラッときた。震源はいわき市の好間ないし閼伽井嶽あたり。震度は2だった。
すぐ干し柿を見に行く。大丈夫だった。ついでにざるごと台所に戻し、軟らかくなった干し柿は1個ずつラップに包んで冷凍室に入れる。
傷があって一部やわらかかったものは、硬くなるのも早い。果汁もしみ出して、ざるの下の台紙まで濡らしていた。これが2個あったので、カミサンと試食をした。ほんのり甘かった。
正月用には4~5個もあれば十分。残りは、だれというわけではないが、客人に食べてもらおう。
干し柿は人間がつくったというよりは、冬の空気と時間が生み出したもので、人間はその手伝いをしただけ。
「置き干し柿」は文字通り、「置く」だけにした手抜き干し柿だ。それでも軒下につるした干し柿と味にそう違いはなかった。