2013年12月13日金曜日

移動販売車

夏井川渓谷には小集落が点在している。その一つ、牛小川区にわが隠居(無量庵)がある。集落の“定点観測”を始めて18年。当初8人ほどいた子どもたちは、今は1人か2人に減った。隣の集落は中高年ばかりになったのではないか。街から離れた山里、郊外の農村、街の古い住宅団地などで進んでいる少子・高齢化のひとコマだ。

それでも、山里に住むお年寄りは元気だ。毎日、畑仕事をする。周囲の自然から季節の恵みをいただき、加工して保存する。肉や魚、果物などの生鮮食品は移動販売車=写真=から調達する。あるいは自分で町に出かけたり、子どもたちの力を借りたりして、必要な品をととのえる。

自給自足とまではいかなくとも、毎日の暮らしはこうしてつつがなく営まれていた。少なくとも原発事故が起きるまでは。

渓谷で除染作業が進められている。無量庵でも行われた。その作業の前・途中・後と、日曜日だけでなく平日にも様子を見に行った。それで、移動販売車に出合った。集落の暮らしに欠かせない“ミニスーパー”である。いつかは撮りたいと思っていた写真をものにすることができた。

車には野菜・果物などの生鮮食品や保存食品が積まれており、お年寄りが買い物をしていた。3・11後は自然の恵み、たとえば天然キノコの採取・消費の自粛が言われている。その分、買う量が増えたのではないか。

それからざっと2週間後の12月10日、イトーヨーカドー平店がいわき市内で移動販売を始めたというニュースに接した。テレビで見る限りは、大きなトラックだ。渓谷にやって来る移動販売車の3倍、いや4倍はあるのではないか。

ネットにアップされた広報資料によると、経済産業省の「地域自立型買物弱者対策支援事業」を活用した移動販売で、ヨーカ堂としては東北初の「あんしんお届け便」の運行だ。山里と同様、少子・高齢化が進んでいる街の住宅団地も含めて、田人(貝泊、荷路夫)・遠野(入定)・三和(下永井)・明治団地の4地区5カ所を日替わりで回る。

「買物弱者」対策として、こうした移動販売が各地で行われるようになった。NPOも大きな住宅団地で移動販売を手がけている。少子・高齢社会の到来、なかでも団塊の世代が65歳以上の高齢者層になだれ込みつつある今、移動販売は可能性のある商売には違いない。

山里には移動販売車を必要とする理由がある。スーパーにも移動販売に打って出る理由があるはずだ。表向きは経産省の制度活用といっても、売り上げは少子・高齢社会の到来で頭打ち、いや下向きになるのは目に見えている。「待って売る」だけではなく、「出かけて売る」ことも必要になった。自営業、NPO、大型スーパーと、うまくすみわけができるといいのだが。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

9年ほど前に藤越で買い物弱者向けのネットスーパー、お届けの事業を始めた。しかし1年ともたなかった。

広域ないわき市の買い物弱者にとり待望のシステムに見えたが需要はなかった。まだまだネット通信やカタログを見て生鮮食料品などを買うという環境がなじまなかったのか?

地方は新しいシステムがいきわたるのに都会に比べ10年はかかるのか?

国の補助がなければ商売としては成り立たない事業だろう。しかし買い物に行けないお年寄りや体が不自由な人たちそれにクルマなど移動手段のない人たちにとって移動販売は生きるための動脈だ。

過疎地域はインフラが生き届かず本当に不便だ。今の避難区域と同じような問題が実は昔からなくなっていない。