2014年10月25日土曜日

二ツ箭の雲と影

 草野心平記念文学館から見える二ツ箭山の上に白い雲がたなびき、山腹にその影ができていた=写真。

 尾根と沢とで複雑に入り組んだ山襞(やまひだ)に映る雲の影は、カモノハシのくちばしとダックスフントの頭と胴体をもった生きもののようにみえたり、左右から真ん中にあるえさをがつがつ食べている2匹の猫のようにみえたりする。

雲の影が真ん中でへこんだあたり、斜めに細く光る“爪の先”は、大地震で崩れた桐ケ岡林道ののり面だ。3・11に二ツ箭山頂の女体山の岩の一部が剥落した。たぶん同時に、中腹の林道でもガケ崩れが起きた。グーグルアースで見ると、今は防災工事が終わって通行が再開されている。

通称「ヤマノカミ」の「大山祇(おおやまつみ)神社」奥の院の上方だ。3・11から2カ月余がたった5月下旬、いわき市内の鉱物を研究している知人(いわき地域学會の仲間)の案内で現地を訪ねた。各所で落石がみられた。二ツ箭山の月山登山口の先で大量の土砂が林道を埋めていた。

物の本には、新第3紀の後半、二ツ箭断層を境にこの山の南側(写真に写っている面)がずり落ちた。新第3紀は2303万年前から258万年前の間というから、約1150万年前~258万年前に大地の変動が起きたことになる。防災工事が行われた林道の下方にその断層の破砕帯が見られる。大昔には土石流も起きたはず、と知人はいう。今は中腹まで人が住み、梨畑などが広がる。

3・11から1カ月後、いわき市南部の井戸沢断層(塩ノ平断層)と東隣の湯ノ岳断層が動いて、巨大余震が発生した。東電の福島第一、第二原発までの距離は、中部の二ツ箭断層の方が近い。3・11後、東電はこの断層についても地震発生が促進される傾向にある、と評価を変えた。ただの絵はがきのように、二ツ箭山の風景を見ることはできなくなった。

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