2013年9月8日日曜日

きりん子林の守り神

平・大町のアートスペース・エリコーナから展覧会案内のはがきが届いた。「おでかけください」と一筆添えてあった。

9月4日から15日まで、福島県出身・在住または賛同する県外の学生や若者による作品展「F.ライン~福島へ~」が開かれている。初日に見に行くつもりが、雑用続きできのう(9月7日)になった。画廊主から実行委員長の安藤夏太郎さんを紹介された。

安藤さんのスギの植物画と、田人二小の全校児童5人がスギの葉を使って制作した「きりん子林の守り神」=写真=に吸い寄せられた。安藤さんは田人二小の南大平分校で学んだ先輩でもある。分校は平成21年度末に閉校した。本校も今年度限りで閉校する。

いわき市の山間部に位置する田人は農林業のむら。「守り神」制作までを記した解説文によると、田人ではスギは身近な木材で、子どもたちはみんな「すぎの子」と呼ばれている。その「すぎの子」たちの思い出の詰まった場所が、田人二小の学校林「きりん子林」だ。守り神には閉校後も「きりん子林」を守り続けてほしい、という願いが込められている。

中通りの田村市船引町に「お人形様」がある。身の丈4メートル。鬼のような相貌で悪疫の侵入を防ぐ。髪の毛は杉の葉だ。それを連想させる田人の森の「守り神」は、頭がイノシシ、手足がクマ、角がクワガタ、羽がトンボ、しっぽがトカゲの「合体動物」だ。怪獣にはちがいないが、どこかかわいらしい。

守り神のいる大地の上空には大きな鳥が羽を広げている。これもスギの葉でできている。「猛禽」だ。田人の自然に君臨する、もう一つの「守り神」だろう。

田人の自然と文化を反映した想像力豊かな「守り神」に対して、安藤さんのスギの絵は微に入り細にわたるスギの標本画だ。大学で植物分類学を学んだ。今は研究生をしながら生物画・植物画を勉強しているという。

私はじっくりスギの葉を見たことがない。科学に裏打ちされた、顕微鏡のような目でスギの葉や花の形態をトレースしている――その地道な作業を思い、しかし鉛筆と黒インクの線の美しさに引かれて、何度も見入った。美術と科学の融合をめざすという。その意気やよし、である。

0 件のコメント: