「内水はんらん」という言葉を聞いたのは、令和元年東日本台風のときだった。
雨水は側溝を伝って川に排水される。これが間に合わなくなるほどの大雨になると、下水道のマンホールのふたも浮き上がり、雨水が噴き出して道路が冠水し、やがて家屋にも浸水する。
2019(令和元)年10月、台風19号がいわき市を直撃し、支流の好間川・新川を含む夏井川水系に大きな被害をもたらした。
わが行政区はさいわいこれといった被害はなかった。側溝から水があふれ、道路も一部冠水したものの、通りが川のようになることはなかった。
ところが夏井川沿いにある、少し上流の行政区では一部、建物に浸水被害が出た。川が増水して側溝の水を吐き出せなくなって、内水はんらんが起きたのだ。
イメージとしてはこういうことだろうか。内水の「内」は堤防の内側、つまり堤防で守られている住宅や田畑があるところ。
堤防から水があふれたり、堤防が壊れたりして川の水が流れ込む洪水とは異なる。堤防は大丈夫だったのに、川に吐き出せずに浸水した、ということだろう。
いわきの中心市街地(いわき駅前周辺)に行った帰り、夏井川の堤防をよく利用する。内水はんらんの話を聞いた直後、どこで、どの排水路で水があふれたのか、注意しながら戻った。
1カ月前の9月1日。回覧資料として「内水ハザードマップ」を区内会に加入する全世帯に配布した。
わが行政区は平地区版②(中神谷、塩、鎌田と隣接の草野・泉崎、下神谷)に該当する。
おおざっぱにいえば平市街の東方、北は常磐線、南は夏井川にはさまれた平野部(大昔は氾濫原)の内水ハザードマップで、想定される浸水の深さを、水色(5~20センチ)、黄色(20~50センチ)、桃色(50センチ~1メートル)など、6段階の色で表示している=写真。
わが行政区は旧道沿いと、それと交差する細道が水色、住宅地の一部が黄色、桃色がスポット的に2~3カ所あるほかは、おおむね白地図のままだ。
前に古本屋から地形分類図が載った『土地分類基本調査 平』(福島県、1994年)を購入した。
夏井川流域のうち、北は渓谷の江田、東は新舞子浜、南は常磐・水野谷、西は三和町渡戸を範囲にした地形分類、傾斜区分、表層地質、土壌、土地利用現況の五つの地図が添付されている。
わが家のあるあたりは目の前の道路を含めて夏井川の旧河道、向かい側は谷底平野だ。大雨が降ると歩道がたちまち冠水するのはそのことと関係しているのかもしれない。
1時間に120ミリの降雨を想定しているが、これは絵空事ではない。9月11日には東京都目黒区で1時間に134ミリという猛烈な雨が降った。
いわきでも一昨年(2023年)9月、台風13号に伴う線状降水帯が大雨をもたらし、主に新川流域の内郷地区で床上・床下浸水が相次いだ。
今までの経験則は通用しない。内水を含めた浸水の危機意識をアップデートしなくては……。
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