2013年11月5日火曜日

市民文学賞

いわき市の文学賞「吉野せい賞」の表彰式が、せいさんの命日のきのう(11月4日)、草野心平記念文学館で開かれた=写真。5人の選考委員を代表して選評を述べた。

8月中旬から応募作品を読み続けること1カ月半。各選考委員推薦の一次選考を経て、10月中旬に選考委員会が開かれ、下旬に記者会見をして結果を発表し、きのう、最後の仕事として受賞者との会食、表彰式に臨んだ。2カ月余の長い道のりが終わった。

いわき市とのかかわりを重視した市民の文学賞だ。応募できるのは①いわき市内に在住・通勤・通学している人②いわき市出身者③過去にいわき市に在住・通勤・通学した人で、400字詰め原稿用紙にして15枚以上~100枚以内という決まりがある。今年の応募作品は45編。全体で3500~4000枚は読んだことになるだろうか。

毎日4~5時間、雑事をこなしながら、ひたすら文字を追いかけた。途中から眼球がはれて重くなり、焦点の調整がうまくいかなくなった。エアコンのない南向きの茶の間が“読書室”だ。残暑と庭の照り返りがこたえた。それでも、今年はレベルの高い作品がそろった、読み続ける「試練」より「楽しみ」が勝った。

東日本大震災と応募作品の関係でいえば、3年目で少しずつ客観化しうる時間の経過と思考の深化がうかがえるようになった。正賞(せい賞)の「橋霊(はしだま)の幻奇譚」がそうだった。震災復興への思いを秘めつつ、読者を別の世界へいざなう文学本来の面白さに満ちていた。リアリティーを備えたファンタジーだ。

ハイレベルの作品がそろったために、いつもの年なら入賞間違いなしという作品も選外になった。“絶対評価”だけでなく、他作品との“相対評価”で決まる不運を思わないではない。それら選外の作品も含めて、作品に出合うことは人に出会うことである、ということを実感した。市民文学賞の妙味だろう。

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