2013年11月6日水曜日

山麓線

主要地方道いわき・浪江線=写真=は通称・山麓線。いわき市と、川内・葛尾2村を除く双葉郡6町の西側、阿武隈高地の裾野を縫って走る。2年8カ月前の原発事故では、双葉郡民の避難道路のひとつになった。

2011年3月12日、車が数珠つなぎになって走るのもままならない様子を、グーグルアースで確かめることができる。山麓線と国道6号が接する下神谷地区の草野小と、わが家の近くの平六小に避難民が続々と詰めかけた。当時、なぜ避難してくるのか、“放射能音痴”のいわき市民にはよくわからなかった。

山麓線は実家(田村市常葉町)からの帰りによく利用した。往きは、いわき市平のわが家から小川町の夏井川渓谷経由で、川前町・荻の峠を越えて川内村に入る。あるいは渓谷をそのままさかのぼって田村郡小野町に出る。そしてもうひとつ、小川の町はずれから国道399号を利用し、山を越えて川内に入るルートもある。

今は川前~川内~田村市ルートで実家に帰り、夏井川沿いの田村市~小野町ルートで戻ってくるのが定番になった。

山麓線を北上すると、大熊町で双葉から郡山へとほぼ真西に延びる国道288号にぶつかる。この288号が原発事故のあと、一部区間で通行止めになった。今は通れるのかもしれない。が、空き巣と間違われるのもいやなので足を向けないようにしている。私のなかではすっかり幻のルートと化した。

先日(11月2日)、震災後初めて、この山麓線を富岡町まで北上した。いわきで被災者の支援活動を続けているNGO「シャプラニール=市民による海外協力の会」の縁で、いわきに何回か足を運んでいる、主に首都圏の有志十数人が“ダークツーリズム”を計画した。いわき側の人間のひとりとして夫婦でツアーに同行した。

最初に訪ねたのは、いわきの若い知人でツアーの案内人でもあるTさんの、オジさんの家。山麓線沿いにある。草が生い茂り、荒れ地と化した畑を過ぎると、すぐ屋敷になる。細長い物置、納屋、母屋、若い世代が住むモダンな家、手作りケーキの店、……。富岡でも大きな農家ではないだろうか。オジさんがたまに来て、片づけをしているという。

広大な屋敷に人の気配はなかった。土の庭の放射線量は1メートルの高さで毎時4.2マイクロシーベルトだった。日中の立ち入りが自由になった山麓線沿いでこの数値だから、帰還困難区域は推して知るべし、だろう。初めて体験する高い数値に心身が緊張するのがわかった。

このあと、原発のある海岸部へ近づくと――。イノシシに遭遇したり、おまわりさんに職務質問をされたり……。その話はまたあとで。

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