隣家は空き家になって、売りに出された。関西に住む娘さんが年に何回か帰って来る。そのつどカミサンにあいさつをし、情報交換をする。
ある日、造園業を営む近所の人が来て、隣家の庭木の剪定をすることになったという。娘さんから頼まれたのだろう。
わが家の庭と違って、隣家の庭は岩石と松の木やツツジなどを組み合わせた日本庭園風の造りだ。
その庭の木が放置されて乱雑に枝を伸ばし、地面を雑草が覆っている。プロがそれを2日がかりで「整髪」した。
勝手に生えてきたフヨウは根元から切り取られた。そばに排水マスがある。これを壊す心配があるのだろう。
南隣の家とはブロック塀で遮られている。塀のそちら側は物置で、その前に軽自動車が止まっている。
車のそばにキョウチクトウが植わってあり、早くも白い花を咲かせた。ところが、車にその花が落ちてこびりつく。ご主人は隣家の庭がきれいになったあと、キョウチクトウの枝を剪定した。
花が車の屋根にこびりつくのは、わが家も同じだ。前はプラムとイボタノキ。そして、今は花の終わったあとの青柿だ=写真上1。これがしょっちゅう車の屋根に落ちる。
まだ3センチほどだが、秋に向かって実が肥大するにつれて、車に当たる音が大きくなる。
で、青柿が目立つようになると、車を止める位置を変える。理由は青柿のほかに、もうひとつ。
庭に車のタイヤの轍(わだち)ができている。雨が降ると、そこに水がたまる。車の前輪と車体に泥が付く。それがいやで、震災まで物置があったところに止める。
こちらは南向きで、もろに日が当たる。夏にはハンドルが直射日光でやけどするくらいに熱くなる。それを避けるためにハンドルにタオルを掛けておく。早くも6月中旬に「アチッ」となった。
しかし、そこにも轍ができて、雨が降ると水がたまるようになった。梅雨空には両方の中間、ツワブキの群生に突っ込むようにして、斜めに車を止める。
ここも直射日光を浴びる。車を運転するときには、すぐ窓を開ける。するとたちまちヤブカが現れる。
梅雨に入ったとたんの猛暑で、タイヤの轍が乾いたのはいいのだが……。上には青柿、そして直射日光もあって、車を止める場所がなかなか決まらない。
ある日、日が西に傾いたのでいつもの場所に止めると、ネコのシロが現れて車の屋根の上で横になった=写真上2。
このネコはなにをするにも「わがもの顔」のところがある。「君臨」するのが好きらしい。
つい「コラッ」と言いたくなるのだが、「ネコだぞ」ともう一人の自分がたしなめる。結局、放っておく。ネコも暑いのだ。