いわき市立美術館で企画展「コレクションの輝き」が開かれた=写真(チラシ)。閉幕1週間前の12月7日、展示作品を見た。
朝は夏井川渓谷の隠居へ出かけて土いじりをし、マチへ戻るとすぐ文化センターの地下にある喫茶ハニーで昼食をとった。私らと同じシルバー世代でびっしりだった。これについては後述する。
同美術館は、1945年以降の現代美術を収集の大きな柱にしている。その収蔵作品の中から、「風景」と「人間」をキーワードに選んだ作品を展示した。
企画展にはなじみのある作品が展示されていた。「なじみ」があるとはこういうことだ。
企画展とは別の常設展をはじめ、過去の企画展、地域紙での紹介など、いわきでは現代美術作品を見る機会が多い。
イブ・クライン、アンディ・ウォーホル、アンソニー・グリーン、ホルスト・アンテス……。いわきゆかりでは、物故作家の若松光一郎、山野辺日出男、松田松雄、熊坂太郎、田口安男など。
現役バリバリの吉田重信さんの「1994年4月30日 Bordeaux」という映像作品(特別出品=作者蔵)がおもしろかった。
フランスはボルドーへの移動の途中、車窓に写る風景を虹色の光としてとらえたもので、前にフェイスブックかなにかで見た記憶がある。
現代美術家は常に現れる。無名の作家の作品をいち早く評価して購入し、やがて作家が世界的に知られる存在になる。
昭和59(1984)年4月の開館から41年がたった今、まさにその方針が価値を帯びてきた。
作家の評価が定まることで美術館の「含み資産」(収蔵作品の経済的価値)はかなりのものになっている。
今回も懐かしい思いでクラインの「人体測定」と対面した。そして、これは現代美術とは関係がないが、しかし個人的には「美術つながり」としてもくくられる人と時間との結びつきを感じさせる体験だった。喫茶ハニーのことである。
この店は文化センターが開館したときからそこで営業している。経営者の父親とは、平・南町にあった草野美術ホールで出会った。
以来、同センターで展覧会があるとハニーで一休み、というケースが多かった。道路向かいに美術館が開館してからは行く機会もなくなったが、それでも喫茶ハニーは「古き良き時代の喫茶店」として脳裏に生きていた。
「ハニーで昼食を」。カミサンがそう決めていたのは、友達から昼のにぎわいを聞いていたからだ。実際、行って驚いた。シルバー世代で席が埋まっていた。
注文を取り、水を運び、食べ物とコーヒーを運ぶ女性もシルバーだ。カウンターの中にいるのはマスターと、私が現役のころ、取材先でもあった社協に勤めていた弟さん。
シルバー世代がこうして集い、食事をして談笑する――。そんな空間があること自体、「奇跡」ではないか。元ブンヤとしてはつい「これはマチダネになる」なんて考えてしまうのだった。