「カニノツメ」と題した10月16日のブログで、「珍菌」が多いキノコの腹菌類に触れた。そのブログの終わりの部分。
――画廊や美術館で作者が心血を注いだ絵画や彫刻を見るのも好きだが、それと同じくらいに山野で人知れず展開される美の競演も捨てがたい――。
この「美の競演」はキノコに限らない。蛾や蝶たちも小さな背中にきれいな文様をまとい、これでもかとばかりに人を引き付ける。
実際は人間の評価なんかどうでもよくて、天敵を欺き、異性を引き付ける――それが目的なのだろうが、見事な色彩と模様というほかない。
山野ではなく家の中に迷い込み、写真を撮ったもののうち、種名がわかった虫たちを、そのデザインの面白さから四つほど紹介する。
まずは蛾のナカグロクチバ(中黒朽葉)=写真上1。暑くて茶の間のガラス戸を開けていたころ、カーテン代わりの蚊帳に止まっていた。初めて見る種で、最初は蝶・蛾の区別がつかなかった。
こんなときにはスケッチをして、それを基にネットで調べるのだが、「らしい」種にたどり着くまでには時間がかかる。
ところがおもしろいもので、ほかの種を調べているうちに、似たような画像に出合って「これだ」となるケーズが多い。ナカグロクチバはそうやって偶然わかった。
沖縄や九州に多い南方系の蛾だという。近年、本州でも見られるようになり、2005年発行の図鑑では、分布域は「関東以南」になった。
それから20年がたった今年(2025年)、東北最南端のいわきまで北上していることが確認できた。
エビガラスズメ(蝦殻天蛾)=写真上2=も蛾である。これも背中の文様をスケッチし、それを見ながら検索を続けているうちに、「らしい」画像を見つけた。これはどこにでもいる蛾のようだ。
ホタルガ(蛍蛾)=写真上3=は昼間、玄関の戸に張り付いていた。この蛾はなんとなくわかっていた。
頭が赤い。黒い翅に、斜めに白い帯が入っている。名前からしてそうだが、ちょっと見だけでもホタルを連想する。低山地に普通に見られる種らしいが、最近は住宅地でもよく見かけるとか。
最後に、蝶のサトキマダラヒカゲ(里黄斑日陰蝶)を=写真上4。これも偶然「らしい」画像に出合って種名がわかった。自然はデザインの宝庫――今回も、それを再認識した。
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