いわき駅前の総合図書館で10月28日、令和7年度のいわき資料常設展「デザイナー鈴木百世(ももよ)
知る人とぞ知るいわき人」がスタートした。来年(2026年)5月24日まで。
鈴木百世(1901~42年)についてはこれまで3回、拙ブログで取り上げている。それを再構成したうえで、常設展で得た「じゃんがら人形」の「新情報」を紹介したい。
鈴木百世は平で生まれ、豊島師範学校(現東京学芸大)で美術を学んだあと、東京の小学校で教鞭をとった。
体調を崩して帰郷し、昭和10(1935)年、商業広告などを手がける「図案社」を設立した。同15年には再び教壇に立ち、2年後に倒れて暮れには亡くなった。
その孫が市立図書館と暮らしの伝承郷に遺作を寄贈した。図書館の常設展では、 「常磐炭田」や四倉などの鳥観図(ちょうかんず)、地酒のパッケージの原画と作品、平七夕祭りのポスターなどが展示されている。
鈴木百世は、素焼きの人形に着色した「じゃんがら人形」の売り出しにも力を入れたという。
関係資料として、「じゃんがら人形」(13人組)のモノクロ写真が展示されていた。写真の解説には、没後10年の昭和27(1952)年、郷土の土産物として「じゃんがら人形」の制作が再開され、平駅(現いわき駅)前の「いづみや」で販売された。昭和50年代の終わりごろまで制作された――とある。
写真を見て驚いた。義弟が持っていた「じゃんがら人形」とそっくりではないか。ふっくらとした顔に細い眉と目、頭髪、鉢巻、浴衣、太鼓、鉦、ちょうちんなどもちゃんと描かれている。
実際の人形は高さが7センチ強=写真=で、写真の人形もたぶん同じだ。ちょうちん持ちのほかに、太鼓打ち(たいこぶち)が3人、鉦切(かねきり)が9人で、義弟が持っていた5人組(ちょうちん持ち、太鼓打ち2人、鉦切2人)に比べると、フル編成といえるだろう。
翌々日、細部を見比べるため、人形をスケッチした紙を持って図書館へ出かけた。義弟の人形のちょうちんには「いわきじゃんがら」と書かれているが、写真の方は「若連」のみで、ケースの奥に「平名物
じゃんがら人形」とある。
写真の方の浴衣には、たすきは描かれていない。が、浴衣の波模様と千鳥はそっくりだ。13人組が5人組に、「平名物」が「いわき平名物」になっただけで、少なくとも鈴木百世の「じゃんがら人形」と同じ系譜にあるものとみてよさそうだ。
ただし、だれが制作を引き継ぎ、再開したのかまでは、解説からはわからない。筆さばきはいたって繊細なので、制作者は女性?と前に書いたが、それに関しては撤回しないといけない。かえってわからなくなったからだ。
戦前・戦中に活動したいわきのグラフィックデザイナー、鈴木百世。その作品を、人となりをもっと知りたい。そんな思いが、「じゃんがら人形」を介していちだんと強まった。
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