フェイスブックに「いわき市魅せる課」の広告が載った。いわきの農産物と、それを支える人々をつなぐポータルサイト「いわきのめぐみNAVI」をPRするもので、画面を開くと新着情報に「出荷制限の緩和」があった=写真。
野生キノコの話に違いない。記事を読むとそうだった。原発震災以来、福島県内では会津の一部を除き、野生キノコの出荷制限(いわきは摂取も)が続く。
それが一部緩和されたという。リンク先の福島県のホームページの記事も含めて整理すると、次のようなことらしい。
野生のマツタケ、ナメコ、ナラタケ、ムキタケ、クリタケのうち、県の非破壊検査で基準値(キロ当たり100ベクレル)を超えなければ、検査を受けたものは出荷が可能、という内容である。
制限が一部緩和された時期は種類によって異なる。時系列でみると、マツタケは2021(令和3)年9月10日、ナメコ・ナラタケ・ムキタケは2023年11月28日。そして今回、クリタケが9月25日に同じ内容で緩和された。
マツタケはシロを持っていないので、採ったことはない。ナメコもいわき地方では難しい。ナラタケは普通に、ムキタケはたまたま、といった感じで採ってはいた。
狙って採りに行くのはクリタケだ。しかし、今はもうシロ(採れる倒木)はない。が、一部制限緩和となればキノコ採りに光がともったことは確かだろう。
水野仲彦著『山菜・きのこ・木の実フィールド日記』(山と渓谷社、1992年)は、写真のわきにメモ欄があって、採取日と場所を書き込むことができるようになっている。
原発震災の前、夏井川渓谷の隠居にこの本を置いて、採取のたびに書き足していった。その一部を紹介する。
ウラベニホテイシメジ(10/10)、アカモミタケ(10/11)、ナラタケ(10/23)、ヒラタケ・ハナビラニカワタケ・クリタケ(10/24)……。
なかでもクリタケは、10月25日を目安にシロへ行くと、はずれたことがなかった。腰のかごからあふれるほど採れた年もある。それを汁の実にしたり、おろしあえにしたりする。その楽しみが原発震災で断たれた。
2012年10月に書いたブログの一部を引用する。――キノコの「旬」は「瞬」。人知れず森の中に現れ、消えていく。
だからこそ足繁く森へ通っていたのだが、それにブレーキがかかった。図鑑をめくってキノコを追憶するだけになった。東電は「自然享受権」をどうしてくれるのだ、という思いが膨らむ――。この気持ちは今も変わらない。
あれから15年目の秋である。いわき市の「見える化」プロジェクトも、放射性物質の有無を徹底して「見せる」から、いわきの農産物のおいしさを「魅せる」に変わった。
「いわきのめぐみNAVI」はその発展形だろう。農産物や生産者、直売所などの情報がまとめられている。ときにはここを訪れて、キノコの情報を「最新化」しなくては――やっとそんな気持ちになってきた。
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