2014年1月6日月曜日

道路・鉄橋・鉄塔

 漫然と見ていた風景が、3・11後、一変した。何度も書いているものの一つに送電鉄塔がある。ドライブ中に遭遇すると、どこの電力会社の鉄塔なのか、気になる。

 夏井川渓谷の隠居(無量庵)へ行く途中、最初の坂を上りきったところに東北電力の夏井川第3発電所がある。もちろん水力だ。春にはソメイヨシノが赤い屋根と白い壁の瀟洒な近代建築物をつつみこむように咲く。

 県道小野四倉線とは夏井川に架かる木橋で結ばれている。その木橋の近く。まっすぐ伸びた県道の先に磐越東線の鉄橋(高崎桟道橋)が見える。真上の尾根には東京電力広野火力発電所の送電鉄塔が立つ。
 
 最近、この道路・鉄橋・鉄塔=写真=を、中央と地方の関係で見る癖がついた。川向かいの水力発電所を加えると、日本の近代化の歩みがこの風景には凝縮されている。
 
 道路(磐城街道)は明治時代、県令三島通庸(みちつね=1835~88年)によって整備された。磐東線は大正6(1917)年、平(現いわき)~郡山間が全通した。広野火発は昭和55(1980)年に1号機が運転を開始した。ちなみに、夏井川第3発電所が稼働したのは昭和6(1931)年だ。

 谷から尾根へと、垂直に明治・大正・昭和が並ぶ。道路と鉄道は、中央と地方の関係でいえば、地方と地方を結ぶ“肋骨”のひとつにすぎない。鉄塔は違った。肋骨道・鉄路をまたいで、対岸の三和町で原発の電力と合流し、首都圏へと尾根筋を南下していく。

 道路はしょっちゅう利用する。磐東線はめったに乗らないが、「おれらの鉄道」には違いない。鉄塔は? 住民の日常の外側にある。どこから来てどこへ行くのか、などとは原発事故が起きるまで考えたこともなかった。
 
 そのうえ――と、これは現役キャリア官僚が匿名で書いた小説『原発ホワイトアウト』を読んだからいうのだが、送電鉄塔のもろさが気になるようになった。

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