夏井川渓谷の隠居へ通い続けて30年余になる。阪神・淡路大震災(1月)、地下鉄サリン事件(3月)のあとの5月末、地元区長の案内で家々を回ってあいさつした。
週末(今は日曜日だけ)は街のデスクワークから山里のフィールドワークに切り替える。
街は人と人との関係が主だが、山里の谷間では人と自然との関係が中心になる。自然の移り行きに身をゆだねながら土いじりをし、森を巡ってキノコを採る。それを記録し続ける、ということをしてきた。
原発震災後は、庭の全面除染が行われ、森へ入ることが激減した。キノコは「採る」から「撮る」に変わった。
森はまだ原発事故から回復できずにいる。それに加えてV字谷である。道路は険しい崖と谷の間をくねくねと進む。近年の温暖化も手伝って、山が乾いて荒廃しつつあるのではないか――そう感じることがよくある。
ところどころに「落石注意」の標識が立つ。渓谷に入るとすぐロックシェッドがあり、落石防止のワイヤネットが張られている。
これがあるから、ふだんの通行には支障がない。とはいえ、絶えずどこかで落石や倒木が起きる。
道端に新しい落石が転がっている。折れた木の幹や枝が寄せられている。これが近年は常態になってきた。範囲も拡大しているようだ。
平地を過ぎて渓谷に入るちょっと手前、河岸段丘の集落を過ぎたあたりで、倒木が片側の車線をふさいでいた。崖があるわけでもないのになぜ? 30年通い続けて初めてのことだった
渓谷ではさらに、崖の中腹で木が折れたままになっていたり、車の通行に支障のないように切られたりした所がある=写真上1。
渓谷は岩盤が露出気味で、緑は茂っていても根張りの浅い木が多いのだろう。近年は「ナラ枯れ」が進み、その影響で折れる木もあるようだ。
倒木が崖の中腹に残っているあたり、直下の道路にも注意を促すカラーコーンが並んでいる=写真上2。
ワイヤネットが道にせり出すように落石で膨らみ、その上には崩れ落ちた土砂がたまっていた。
よく見ると、のり面は滑り台のようにへこんでいる。それで土砂と石が道端まで崩れ落ち、上部では木が倒れたのだ。
「令和元年東日本台風」では、渓谷も至る所で落石や倒木に見舞われた。沢では小規模な土石流が発生した。岸辺の駐車場もえぐられて消えた(今は復旧した)。
というわけで、渓谷に入るとおのずと意識が切り替わる。「そこにある危険」に敏感になる。渓谷の自然から学んだ一番大切なことがこれだ。
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