カミサンの茶飲み友達が「読んだから」と文庫本を置いていった。沢野ひとし『ジジイの片づけ』(集英社文庫、2025年)。
それを晩酌が始まったときに、カミサンが差し出して言う。「『あなたに』って言ってたわけではないけど」
本のタイトルを見た瞬間、「ジジイを片づける?」。そう早とちりした。カミサンが私の表情を見て、急いで抑えにかかる。「ジジイを片づけるんじゃなくて、ジイサンがやれる片づけの本」
『ジイジの片づけ』ならほんわかした気分にもなるが、「ジジイ」ではいくら著者の自虐語とはいえ、ムッとくる人もいるだろう。
沢野ひとしは「ヘタウマ」と評される線画が特徴のイラストレーター、という程度の印象しかない。
作家椎名誠とは高校時代からの友達で、椎名誠の本にもイラストを寄せている。それで椎名誠とセットで名前は知っていた。
それからすぐの日曜日、夏井川渓谷の隠居で土いじりをしたあと、マチへ戻っていわき市立美術館の「堀内誠一展」を見た。
名前の知られた絵本作家・アートディレクターである。さぞや来館者でいっぱいだろう。美術館の駐車場が満パイだったらどこに止めようか。そんなことを案じながら駐車場に入るとガラ空きだった。なんで?
堀内誠一は女性雑誌「anan」(1970年創刊)のロゴマークをデザインしたことで知られる。
カミサンにとっては青春の象徴のような雑誌だが、「平凡パンチ」派の私は全く縁がなかった。
表紙のロゴマークは強く印象に残っている。むろん、その作者が堀内誠一だったとは当時、知るよしもない。
絵本作家としても活躍した。とはいえ、作品はほとんど見ていなかった。展示物で唯一、懐かしさを感じたのは宮沢賢治の童話「雪わたり」の表紙絵だ。この童話絵本を手に取った覚えがある。
名前だけは超有名だが、作品が思い浮かばないのはアートディレクターとかデザイナーとか、シロウトにはよくわからない業態の仕事をしていたからだろうか。
あまりにも消化不良なので、美術館1階のギャラリー広場で開かれている堀内誠一関連グッズ販売コーナーから、『父の時代私の時代――わがエディトリアル・デザイン史』(ちくま文庫、2023年)を買って読むことにした。たまたまアート系の文庫本が短い間に2冊そろった=写真。
『ジジイの片づけ』は、目次からするとジジイにとどまらず、一般の家庭の片づけにも通じるノウハウ本のような印象だ。すぐできるようなことがあれば、それを参考にしよう。
堀内誠一の自伝の方は、日本の商業デザイン史の一断面とみることができるかもしれない。
いずれにせよ、未知の分野の読み物ではある。これからじっくり読むことにする。
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