2014年11月26日水曜日

トリュフハンター

 11月20日のNHK「地球イチバン」はイタリアの白トリュフの話。新聞テレビ欄に「森に眠る白いダイヤを探せ!1個3800万円⁉夢も恋もかなう魔法のキノコここ掘れワンワン」とあった。

 フランスでは雌豚を飼い慣らして黒トリュフを探す。イタリアでは同じく訓練した犬が白トリュフを探し当てる=写真。日本のマツタケハンターは自分の五官だけで勝負する。共通しているのは、シロ(発生場所)は「息子にも教えない、自分だけの秘密」ということだ。高級菌のハンターの心理は洋の東西を問わない。思わず笑ってしまった。

 マツタケも、コウタケも採ったことのない身には、トリュフ狩りはさらにその上をいく一攫千金の別世界の話だ。だからこそというべきか、その情熱、いや欲望と想像力の限りなさには舌を巻く。

 日本にもトリュフ(セイヨウショウロ)がないわけではない。キノコ研究会の会報や、亡くなったNさんの本などから、福島県内でもセイヨウショウロ科の菌、いわゆるトリュフの仲間が見つかっている。海岸の松林からウスチャセイヨウショウロが、阿武隈の山中からはやはりトリュフの仲間が――。

 震災で家中の本がなだれを起こしたために、今もどこに会報を片づけたかわからず確かめられないのだが、イノシシが掘った穴からトリュフが発見された例を覚えている。<阿武隈のイノシシはグルメなことよ>と今でも思っているのは、そのときの驚きが深く刻まれたからだ。
 
 肝心の白トリュフの香りだが、テレビからは「ニンニクや森の匂い」という珍妙なたとえが伝わってきた。一度、キノコ同好会の忘年会でフランスのトリュフの香りをかぎ、かけらを口にしたことがある。そのときは香水に近いような芳香を感じたものだが……、ニンニクとは。
 
 ついでながら、フランスでトリュフ狩りに雌の豚を使うのは、トリュフの香りが、雄豚が交尾期に発する性フェロモンに似ているからだそうだ。
 
 それはしかし科学が教えることで、実際にはイノシシがトリュフを掘り起こすのを目撃して、経験的に雌豚を使うことを学んだのではないか――阿武隈の発見例から、そんな仮説を立ててネットの世界を漂ってみるのもおもしろいのではないか、などと思っている。

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