東北電力を定年で辞めたあと絵描きになった知人と雑談していたときのことだ。知人は今、80歳前後だ。それから逆算すると10年、いや20年くらい前だったかもしれない。「平タワー」という言葉を教えられた。きのう(11月15日)、不意にその言葉を思い出した。
いわき市の平市街にわりと高い無線塔が2つある。1つは東北電力いわき営業所の建物の上に、もう1つはNTT東日本いわきビルの上に立つ。
ちょっと前からNTTの無線塔が青いネットで覆われている=写真。メンテナンスの一環だろう。<おっ、クリストが来たか>。初めて見たとき、公共建築物などを梱包する美術家として知られるクリストを思い出した。以来、街へ行くたびに無線塔を眺める。その延長線上で記憶の底から「平タワー」が立ちのぼってきたのだ。
「平タワー」は電力の無線塔の異名なのだろう。社員が言い始めたのか、市民が言うようになったのかはわからない。が、言われてみると、東京タワーのミニ版には違いない。夜、東京から電車で帰り、マイカーで家路に就くときなど、夜空に点滅する航空障害灯を目にしてホッとしたものだ。
とはいえ、より市街地にあるという点ではNTTの無線塔の方が「平タワー」にふさわしい。赤と白に塗り分けられた鉄骨が青いマントをまとっている。本やテレビでしか見たことのないクリストの作品が、巨大梱包が目の前にある――。そう、これは「ゲージュツ」なのだ、人間の想像力を刺激する作品なのだ、と考えると楽しくなる。
0 件のコメント:
コメントを投稿