2014年11月3日月曜日

一本足のコハクチョウ

 もう2週間前になる。コハクチョウが来ているにちがいない――朝の10時ごろ、夏井川の越冬地(いわき市平中平窪)に足を運んだら、コハクチョウが130羽ほどいた。そのうちのかなりの数が一本足で眠っていた=写真。すわりこんでいるのも、むろんいた。10月20日付小欄でそのことを書いた。

 コハクチョウはシベリアから渡ってくる。春、北へ帰ったあと、どこでどんな生活をしているのか。若いとき、気になって長谷川博著『白鳥の旅 シベリアから日本へ』(東京新聞出版局、1988年)を買って読んだ。著者はアホウドリの研究者として知られるが、私のなかではコハクチョウの研究者でもある。

 震災のダンシャリのなかでたまたま残しておいたのだが、ページを繰ることはこの20年余なかった。
 
 きのう(11月2日)、たまたま手に取ってみた。コハクチョウのふるさとは北極海に面したツンドラ地帯であること、5月中旬にふるさとへたどり着き、白夜のさなかの6月には産卵が始まること、9月下旬には幼鳥ともども南へ旅立つことを、あらためて知った。
 
 コハクチョウの幼鳥は、いや成鳥もそうだが、長い旅を経て、へとへとになって日本列島にたどり着くのだ。
 
 その意味では、越冬地に着いたばかりの一本足のコハクチョウと、日にちがたって体力を取り戻したあとの一本足のコハクチョウとでは、発するメッセージが違う。とりわけ幼鳥は親鳥につき従い、必死になって山を越え、海を渡って、初めて夏井川にやってきたのだ――そのけなげさを思うだけで胸に温かいものが広がる。

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