2008年2月27日水曜日

君は歩き出した・続き

孫のよちよち歩きの写真を見て思い出した詩がある。
20年前、勤務していた新聞社の正月版に書いたものだ。

「一生」という題が付いている。原文は散文詩風だが、ここでは行分けにして紹介する。


君は生まれた
君ははいはいを覚えた
君はまだあどけない獣だ
君は立ち上がる
君は土のにおいを知った
太陽と海を知った
遠く近く
立ち止まったり
振り向いたり
後戻りしたりした
君はそれから鳥や虫を眺め
羊雲を追いかけた
風にくるまれた
自分では歩けない別の君がいることも知った
花を摘んだ
百葉箱のわきで
五線譜の上で胸がときめいた
しぼんだ
道はあったりなかったりした
長くてつらい夜も
たった一人で
どこまでも行かねばならない時もあった
君は何万回も笑い
歌った
泣いたり
怒ったりした
そしてそれ以上に歩いた
電車のように家族を連結して

歩くのに疲れたら夕日を見よう
静かに深呼吸をしよう
生きてきたことのあれこれを
歩いて来た道のりの長さを思い出しながら

でもそれで終わるわけではない
君の次の君が
そのまた次の君たちが明日また歩き出す
砂漠を街を森を海辺を
そのざわめきが聞こえてくる
星雲へと帰るかろやかな足取りの君に
さあ乾杯!


孫は「まだあどけない獣」(チンパンジーの子供と変わらない)、私は「歩いて来た道のりの長さを思い出しながら でもそれで終わるわけではない」と考えている、といった感じか。

0 件のコメント: