自分の「原風景」にはちがいない。が、幼いころの記憶にとらわれていると、現実を見失ってしまうのではないか。毎年、ヤマユリの花を見ながら、そんなことを思う。
阿武隈高地のほぼ中央、田村市の山里で生まれ育った。夏休みになると、毎日、大滝根川で水浴びをし、館山の奥の雑木林で「おっかけっこ」をした。ちょうどそのころ、林道ではヤマユリが咲き出す。
梅雨が明ける。夏休みが始まる。青空に入道雲がわく。それと前後して、ヒマワリではなくヤマユリが大輪の花を咲かせる。私の小学校時代の夏の原風景だ。
それが今はどうだ。夏井川渓谷でも7月の声を聞くと、すぐヤマユリが咲く。温暖化の影響か、開花時期が早まっている。
ちょうど1年前、渓谷のヤマユリについて、ブログにこんなことを書いた(2024年7月9日付)。
――7月7日はいつものように、夏井川渓谷の隠居へ出かけて土いじりをした。といっても、体感ではこの週末で最も暑かった。
畑の日陰を求めて穴を掘り、生ごみを埋めると、もう息が上がった。15分で作業を中止し、早々に隠居を離れた。
どうやら内陸部に行くほど気温が上昇したようだ。あとでデータを確かめると、中通りでは猛暑日のところが相次ぎ、浜通りでも隠居から近い阿武隈山中の川内村は36・7度だった。
こんな暑さの中で土いじりをすること自体無謀だが、一方では「ヤマユリが咲いているはず」という期待もあった。
小川町の平地ではすでに咲き出し、渓谷でもつぼみが白く大きくなって開花する寸前のものがあった。
籠場の滝の近くまで進むと、まだ小さくあおいつぼみが散見された。その先、少し開けたところで一輪、ヤマユリが咲き、かたわらでつぼみが大きく白くなっていた――。
今年(2025年)も去年と全く同じ状況になった。7月6日の日曜日、籠場の滝を過ぎると、渓谷で最初のヤマユリの花に出合った=写真。
2年前の2023年は、7月9日が日曜日だった。ブログによると、夜明けに雨が降ったあと、曇ったり晴れたりしながら気温が上昇した。朝、夏井川渓谷の隠居へ出かけたが、風がそよとも吹かない。これはこたえた。
この年は植物の目覚めが早かった。いや、その年も、というべきだろう。渓谷の「花ごよみ」が早まっている。
4月のアカヤシオが3月に咲き、5月のシロヤシオが4月に咲く。ヤマユリも咲き出すのは7月後半だったが、近年は7月前半に開花することが多い。
やはりこの年も9日には咲いていた。渓谷はその週半ばには「ヤマユリ街道」になったことだろう。
ブログによれば、これまで渓谷で最も早く咲いた日曜日は7月8日(2018年)だ。今年はそれをさらに2日早く更新したことになる。とにかく早い。そして、暑い。暑い。暑い。
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