2016年3月16日水曜日

若者と古民家

 フランス人の女性写真家、デルフィーヌが昨年(2015年)8月に続いて、わが家の向かいにある義伯父の家にホームステイした。故郷のマルセイユの親友(女性)と、京都に住む日本人男女2人が一緒だった。いずれも30歳前後の若者だ。
 マルセイユの親友は日本語を話せない。が、京都の2人はフランス語がペラペラだ。若い女性はまだ大学生。男性はフリーの編集者で同時通訳もする。彼は日英仏中西の5カ国語を話す。今はロシア語を学習中だという(語学の天才か)。

 3月11日に南相馬市でボランティアをしたあと、いわきへやって来た。2日目、土曜日は原発避難中の双葉郡富岡町へ出かけた。夜には「ホウレンソウ鍋」を囲んで酒を飲もうと、しぐさでデルフィーヌに伝えた。

「ホウレンソウ鍋」は一種のしゃぶしゃぶだ。ニンニクとショウガをスライスして水を張った鍋を卓上コンロに置き、火をつけて塩味をととのえる。それだけ。あとは赤根を切り取ったホウレンソウの葉を1枚ずつ鍋に入れ、同時にスライスされた豚肉をさっとくぐらせて食べる。

 鍋の説明が不十分だったせいもあるのだろう。日本人の感覚では飲んでから食事となるが、気を遣って外で食事をしたうえに、道に迷って帰宅するのが9時半になった。たまたま孫たちが宵にやって来た。フランス人の話をすると、会いたいという。しばらく待っても帰ってこない。会いたいならジイバアの家に泊まるしかない。それはまだできないらしく、あきらめて帰った。

「ホウレンソウ鍋」をつつきながら話した=写真。大学生は京都市内の古い民家(シェアハウス)に住んでいる。同時通訳氏は京都の北、かやぶき屋根の農家で知られる美山町の手前、右京区京北(けいほく)に東京からIターンした。京都の観光地からちょっと離れた山里だ。外国人を対象にした里山ツーリズムを手がけている。冬場を除いて客があるらしい。

 私も20年余前から、夏井川渓谷の隠居で週末を過ごしている。その経験からしても、若者と古民家の結びつきは意外ではない。哲学者の内山節さんの著作を読んでいるとわかるのだが、若者が山里暮らしに興味・関心を抱き、都会から移住するケースが増えている。彼もまたその一人で、自分で山里をフィールドに仕事をつくりだした。

 農山村では、人間が自然にはたらきかけ、自然の恵みを受けながら暮らしている。美しい農山村景観はその関係のなかで維持されてきた。観光の先にあるディープな日本の日常――ぜひ内山さんの本を読むように勧めた。

 あとでネットで検索したら、彼は2014年春、外国人向けインバウンド事業(ディスカバー・アナザー・キョウト)を立ち上げた。それが先日、京都信金が主催する「地域の起業家大賞」で最優秀賞に選ばれた。

 古民家ならいわき市暮らしの伝承郷にある――カミサンの提案で、翌日曜日(3月13日)の朝、車を連ねて出かけた。その話はまたあした。

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