明治の末期に渡米し、大農場を経営して「ライスキング」と呼ばれた国府田敬三郎(1882~1964年)の生涯と、現在の「コウダファーム」を描いたドキュメンタリー映画「ドス・パロスの碧空(そら)
SEED」が完成した。孫の現オーナー、ロス・コウダがいわき市小川町の国府田家を訪問するのに合わせ、敬三郎の母校である小玉小学校で上映会を開催する。ぜひ観覧を――。
小川町の国府田英二さんから案内のはがきが届いた。昨年(2015年)暮れにも、敬三郎が訓導(先生)を務めていた同市三和町・旧差塩小中学校で上映会が開かれている。市三和支所の地域振興担当員に街でばったり会ったとき、彼がその話をしていた。今度は敬三郎のふるさとでの上映会だ。おととい(3月3日)午後、出かけた。
同小5・6年生と、回覧板で開催を知った住民で会場の体育館は満パイになった。そこに、国府田さんからの案内はがき組が何人か加わった。
いわきでは、昨年2月に撮影が行われた。ライスキングの生涯を軸に、ふるさと小川町とカリフォルニア州のコウダファームの映像を交互に映しながら、敬三郎の思いを孫のロスが受け継ぎ、さらに時代に合った米作りをする姿が描かれる=写真。水田があまりにも広大なために軽飛行機で種をまく。その種がまるで雨のように水田に落ちるシーンが印象に残った。
映画とは直接関係ないが、アメリカを代表する詩人にゲーリー・スナイダー(1930年~)がいる。若いころ、日本で禅を学んだ。
詩集『絶頂の危うさ』(原成吉訳=思潮社刊)は妻のキャロル・コウダにささげられた。キャロルの母はジーン。ジーンをうたった詩もある。ジーンは日系アメリカ人で、カリフォルニア州ドス・パロスで農業を営んでいた日系二世のウイリアム・コウダと結婚し、メアリーとキャロルをもうけたという。するとキャロルは敬三郎の孫、ではないか。
敬三郎と愛恵(よしえ)夫妻の間にはウイリアム(貞一)・エドワード(敬二)・フローレンス(米子)の3人の子どもがいた。ロスはエドの子どもで、キャロルはロスのいとこ――ほんとうはそのことを確認したかったのだが、国府田さんらの邪魔をしてもいけないので、映画を見ただけで帰って来た。
映画で何度も強調されていたのが、ネバーギブアップ精神だ。太平洋戦争がおきると、敬三郎らは強制収容所に入れられた。財産も失った。戦後、再び福島県人の粘り強さを発揮して大農場を築き、帰化権獲得運動に奔走する。昨年、カリフォルニアは大干ばつに襲われた。ロスはそれでもあきらめない――。原発震災に苦しむ福島県人を激励する映画でもある。
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