2016年3月28日月曜日

早朝の出会い

 その人とは震災後、早朝の散歩で出会った。ある朝、わが家の前のごみ集積所に生ごみが散乱していた。カラスにやられた。散乱ごみを片付けていると、その人もほうきとチリ取りを持ってやって来た。隣組ではない。が、私より先に“惨状”を見つけて、「散歩する道だからきれいにしないと」と駆けつけた。
 やがて、その人は楢葉町からの原発避難者だとわかった。近所の戸建て住宅に住む。年2回の、まちをきれいにする市民総ぐるみ運動にも率先して参加する。珍しいケースだが、2年続けて隣組長を引き受けている。少しでもホームコミュニティ(受け入れ地域社会)のためにできることをしたい。口では言わないが、その思いで暮らしていることがわかった。

 先日、朝の5時半過ぎ、新聞を取りに玄関の戸を開けると、東の空が赤く染まっていた=写真。散歩を休んで2年4カ月。朝焼けと出合うのはほとんどなくなった。暗いうちに新聞を取るか、寝坊して遅く外に出るか、どちらかになった。その人はしかし、今も早朝散歩を続けているにちがいない。きれいな朝焼けに出合っているかもしれない。

 きのう(3月27日)午後、区の総会が開かれた。ある隣組の班長であるその人も出席した。顔を合わせるなり、私が散歩を休んでいる話をした。「ドクターストップがかかったものだから」。総会がすんで懇親会に移った。その人も残ってくれた。ほとんど区の役員しかいなかったので、その人を紹介した。

 区の役員のなり手がいない。隣組によっては、順番で回ってくる班長の役を拒む人もいる――。いつか、その人にも区の役員になってもらいたい。そう考えていたのだが、「今年中に(楢葉の家へ)帰ります」という。うーん。それはそれで喜ばしいことだが、ずっとここにいて一緒に地域のためにがんばってほしかった、という思いもある。

 初めて名刺を交換した。総務大臣委嘱の行政相談委員をしている。地域のために一生懸命になれる人だからこそ、委嘱されたのだ。楢葉へ帰る前に一度「うちへ遊びに来てください」といって別れた。 

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