国道6号の神谷ランプにある「草野の森」は広さが約800平方メートル。森としての歴史は25年とまだ浅い。
平成22(2000)年3月、勿来の四沢交差点から神谷ランプまで全長約28キロの常磐バイパスが完成したのを記念して、植樹祭が行われた。
植えられた苗木はタブノキ、スダジイ、アカガシ、アラカシ、シラカシ、ハマヒサカキ、ネズミモチ、ウバメガシ、ウラジロガシ、モチノキ、ヒメユズリハ、ヤブニッケイなど約25種。
いずれもいわきの平地の潜在植生で、植物生態学者の宮脇昭さん(1928~2021年)が指導した。
ランプ内のスペースは、のり面が半月形の森になり、残りが広場になった。広場と草地の境には照葉樹(シラカシらしい)が植えられ、今では独立樹の風格を備えつつある。
「草野の森」の前に「未来の風の乙女」像が建つ=写真。四沢交差点にも、「クロソイドの乙女」と題するブロンズ像がある。起点と終点で乙女像が交通の安全と地域の発展を祈っているのだ。
会社をやめたあと、朝晩、夏井川の堤防を散歩した。途中、「草野の森」に寄ってブロンズ像と対面した。森がつくられてまだ10年もたっていなかった。
震災後何年かたって散歩をやめた。そしてまた最近、この「草野の森」を目的地の一つにして「準散歩」を始めた。
広場に立って森をながめるのはおよそ10年ぶりである。木々もまたその歳月を加えて生長した。
時間とともに植生が変化しつつある様子をつづったブログがある。植樹祭からは9年後、現在からだと16年前である。それを抜粋して紹介する。
――まだまだ幼樹が目立つが、若いなりに緑濃く茂り、鳥たちがやって来ては歌い、休むようになった。秋の夕暮れ時のスズメ、朝のキジバト、ヒヨドリ、ムクドリ、冬のアカハラ、そして今はウグイスが森の奥でさえずっている。
照葉樹だから、森は一年中あおあおとしている。カンツバキ、ヒラドツツジ、クチナシといった灌木を配置して、四季を通じて花も絶えないようにした。
それでもよく見ると、落葉樹が何本か混じっている。ヤマザクラの幼樹がある。ヤシャブシの幼樹がある。名前の分からない落葉樹もある。針葉樹のクロマツも人間の丈くらいに生長したのがある。
いずれも人間が植えたものではない。風が運び、鳥がフンと一緒に落とした種が芽生え、生長したのだ――。
ブロンズ像の周りにはツツジが植わってある。これも生長して乙女像を隠すようになった。
若い森にはびこっていたセイタカアワダチソウは、今は反対側の広場を埋め尽くしている。前に草刈りが行われたらしく、丈は低い。「セイヒクアワダチソウ」だ。
いずれにしても、と思う。「草野の森」は人間と鳥と風、そして太陽と雨との協働作業によって絶えず変化し続けていくのだろう。