日曜日の晩は刺し身――。これは30代後半に始まり、70代後半になった今も続く食習慣だ。
1年の流れでいうと、早春~晩秋はカツオ、冬場はそれ以外の盛り合わせだが、冬も生のカツ刺しがあれば食べる。
いわきに根を生やした理由は、結婚後、カミサンの実家の近くにあった魚屋さんのカツ刺しがうまかったことが大きい。
こんなうまい刺し身があるなら、よその土地へ行く必要がない。その後、今の家に引っ越し、車で5分ほどのところに、やはりうまいカツ刺しを提供する魚屋さんがあるのを知った。
以来、約40年。息子さんに代替わりしたあとも、毎日曜日、通い続けた。その魚屋さんが去年(2025年)7月下旬、店を閉じた。
すぐ、日曜日の「刺し身放浪」が始まった。夏場、生のカツ刺しが売り場に並んでいるうちは、どこのスーパーでもかまわなかった。
なじみの魚屋さんのカツ刺しが一番であることに変わりはない。わが生活圏内にあるスーパーのカツ刺しも新鮮だった。さすがはいわきのスーパーである。
ところが秋も終わりのころ、カツ刺しを口にするとずいぶん冷えている。ん、なんだ、これは! 切り身の芯に舌が触れると、さらに冷たい。あわててトレーのラップに張られたシールを見ると、「解凍」とあった。
なじみの魚屋さんだったら「きょうは解凍カツオです」、顔を見るなり言ってくれたので、「じゃ、違うもので」と返すことができた。
が、スーパーではこの対面でのやりとりがない。つい前週の続きでシールも見ずにカツ刺しを買った。解凍カツ刺しを口にしてからは、しっかりシールを確かめるようになった。
それも含めて、刺し身放浪が始まって半年がたつ今も、「次の店」が定まらない。カツ刺し以外の盛り合わせ=写真、つまりは冬の刺し身の量、盛り合わせの種類(3~5種類)、1切れの厚さ・薄さなど、どうしてもなじみだった店と比較してしまう。
似たりよったりならどこでもいい、近場のスーパーへ――と思っても、カミサンは違った。
「うまい店の方がいい」というので、草野の先、四倉にあるスーパーまで車を走らせることもある。
1年前までは盛り合わせもいろんな種類を楽しめた。ヒラメ、ホウボウ、皮をあぶったサワラ、タコ、イカ、タイ、メバチマグロ、天然ブリ……。
イワシの刺し身も忘れられない。カツオと同じ量(普通の大きさで一筋=4分の1)をさばくとなると、大変な手間がかかる。
「イワシの刺し身は常連さん用」と言われたのを覚えている。採算を考えたらやっていられない。このへんは長年のつきあいのありがたさだった。
時にはヒラメやホウボウの粗(あら)をもらった。こちらの粗汁は濃厚なカツオと違って、さっぱりして上品な味だった。
そんな店はもうないのか、あったとしても遠すぎたりして……。日曜日の夕方はいつも悩ましい思いになる。