さわやかな日本晴れだった=写真上1。午前中こそ風があったものの、午後になるとほとんど凪(な)いで、出歩きたい気分になった。
11月29日、土曜日の午後。いわき市文化センターへ出かけた。泉彩華会絵画展と、同サークルの指導者だった故冨田武子さんの遺作展が30日まで開かれた。
たぶん最後の遺作展である。冨田さんの作品をこの目に焼き付けておこう、そんな思いもあった。
冨田さんが指導してきたもう1つの絵画サークル、「ボタニカルアート泉」の作品展でも遺作展が開かれた。
冨田さんのボタニカルアート作品はいわき民報紙上でなじんできた。画家であると同時に、いわきキノコ同好会の会長でもあった。
泉彩華会展でも、キノコと植物を組み合わせた作品や、子どものころから親しんできた馬の絵が展示された。
冨田さんにはキノコ同好会で指導を受けた。やはり、キノコの作品に目がいく。「9月の森は忙しい」と題された大作は、中央にタマゴタケが配されていた。
ほかに、ムラサキシメジらしいもの、オチバタケの仲間らしいものが描かれた作品もあった。
なかで、強くこちらに迫ってくる作品があった。枯れ木に張り付いたカエルの卵塊のようなキノコで、実見したことはない。
年末の同好会の総会・勉強会で、会員がこのキノコを紹介した。拙ブログから、勉強会(2018年)の中身を抜粋・再掲する。
――勉強会は、橋本和昭さん(須賀川市)が担当した。主に観察会でのキノコを写真とともに紹介した。
阿武隈の山々では除染名目で森林の改変が行われた。それで、ある村では福島県で絶滅危惧Ⅰ類のセンボンキツネノサカズキ=写真上2=が消滅の危機にある。
橋本さんたちは緊急避難的にセンボンキツネノサカズキが発生した倒木を別のところへ移した。
その倒木の養分を食べつくしたら、センボンキツネノサカズキはどうなるのか。除染か保存かの二者択一ではなく、除染も保存も、の折り合いのつけ方はできなかったものか――。
このセンボンキツネノサカズキを描いたと思われる作品が2点あった。ミズナラなどの倒木に発生する美しい珍菌で、主に北海道で見つかっていることから、北方系のキノコなのかもしれない。
人知れず生まれて消えていくものがある。そうした菌類をいとおしむ冨田さんの思いが作品から伝わってきた。
ついでながら、ウィキペディアでは阿武隈の発生地を「川内村」と具体的に表記している。