大活字本の動物エッセー、群ようこ『ネコの住所録』は、2匹の近所の猫について書いた「二重猫格」から始まる。
人間の「二重人格」になぞらえて、通行人と飼い主とでは態度をガラリと変える猫のことを「二重猫格」と表現した。
首輪をした黄色いオス猫の「ゴン」は道路に突っ伏して死んだふりをする。通行人はびっくりするが、飼い主が声をかけると「ニャーン」としっぽを振って家の中に入る。
大きな家の立派な門の中にミカン箱のベッドを置いてもらい、ドテッと横になっている「ブタ夫」(キジトラのオス=「チャーリー」という名前が付いている)は、通行人が声をかけても「ブニャー」と押しつぶした憎たらしい声で鳴くだけだが、飼い主が声をかけると「ニャー」と言って起き上がる。
このエッセーを読みながら、わが家の「さくらネコ」の「ゴン」(キジトラ)と「シロ」(全身が真っ白)のふるまいを思い出した。
飼い猫ではない。地域猫で、カミサンがキャットフードをやると、まずゴンが縁側にすみつくようになった。
最初は段ボール箱、ついで「えじこ」(人間の乳幼児を座らせておくわら製の保育用具)をベッドとして用意した。
あとから来たシロは最初、どこかのお嬢さんみたいにとりすましていたが、ゴンよりは年かさらしく、なにかというとゴンを威嚇する。
カミサンはそれでゴンを応援することが増えたのだが、猫同士の力関係を変えるまでにはいかない。
シロは、人間に対しても横柄なところがある。ゴンは玄関のたたきにある踏み台にお座りをして、時折、物欲しそうに「お手」をしてこちらを見る=写真。
シロはそんなことはしない。ちょっと目を離したすきに茶の間に上がり込む。「コラッ」。一喝すると、脱兎のごとく庭に走り去る。
それだけではない。シロはゴンのベッドを奪った。カミサンは新たにゴンのベッドをつくってやった。
カミサンが足の神経痛に見舞われた時、私が代わってえさを与えた。今も時々、代行する。
すると、私を避けて突っ走り、少し先からこちらを振り返って見ていたシロが、だんだん距離を縮めて、今では「ニャー」と鳴くまでになった。11月に入ると足元にすり寄って一周までした。
君子は豹変する。その「豹変」と「二重猫格」から思い浮かんだ言葉が、シロの「猫変」ぶりである。
えさをやるのは朝と夕方の2回だ。夕方は特に「えさ、ちょうだい」の鳴き声が玄関先で繰り返される。
それだけではない。先日も縁側の方からうなり声が聞こえた。やはりシロである。ゴンを縮み上がらせている。なんだか白雪姫をいたぶる王妃みたいだ。