郡山市立美術館へは南の国道49号、北の同288号の中間、阿武隈高地の丘陵地帯を縫ってのびる県道小野郡山線(県道65号)を利用した。
いわき市三和町中三坂で国道49号に別れ、国道349号に出てからは、道路沿いの田畑が確認できるスピードで移動した。
水田がほとんどだった。が、とこどころ草地が出現した。草地はほとんど遊休地と化した元・畑だろう。
若いころ、月遅れ盆と正月にこの道(国道349号)を利用して、田村郡常葉町(現田村市常葉町)の実家へ帰省した。
そのころの記憶では、水田のほかにタバコ畑(ところどころトウモロコシ畑)が広がっていた。それが、今はまったく見当たらない。
田村郡はかつて、全国有数の葉タバコ産地だった。「タバコ畑・上」にも書いたが、私自身、小学生のころは、隣家の農家の「タバコはさみ」(夏)と「タバコのし」(冬)を手伝って、小遣い銭を稼いだ。
「タバコはさみ」は、タバコ畑から摘んできた葉を縄にはさんで小屋で乾燥させることを言う。
隣家の畑は集落の南を流れる大滝根川の崖の上にあった。丘陵地で周りは全部タバコ畑だった。
「タバコのし」は乾燥させた葉タバコを1枚、1枚広げて束ねることを言う。冬場、隣家の居間で行われた。
「タバコはさみ」のときもそうだったが、手に付いたヤニは、せっけんで洗っても簡単には落ちなかった。
タバコは夏、薄桃色のきれいな花をつける。これには引かれた。拙ブログで写真とともに、その花を紹介したことがある。一部を抜粋する。
――タバコの学名はニコチアタバクム。阿武隈高地では6月下旬~7月上旬が開花期で、2~3輪咲くと芯止めのために摘花される。
細長いラッパ状の、筒は白色、先端はピンク色の星型の花だが、摘花されるために農家以外でちゃんと見ている人は少ないのではないか。
2009年7月上旬、現田村市船引町のJR磐越東線磐城常葉駅付近の畑に咲いていたのを、いわきへの帰路、車を止めて写真に収めた。ニコチンとヤニを含んでいる植物とは思えない清楚さだった――。
そのころはまだ、タバコ畑が普通にあった。阿武隈の山里に張り巡らされた道路は、水田を除けば「タバコロード」だった。
喫煙による健康問題が指摘されるようになってからはたばこの売れ行きが落ち、それを反映して栽培面積が減った。東日本大震災に伴う原発事故がこれに輪をかけた。
田村郡の葉タバコは専売公社が買い取った。民営化されて日本たばこ産業(JT)になったあとの2015年3月、郡山工場が閉鎖された。
今度のドライブでは郡山からの帰路、磐東線沿いの田村市滝根町広瀬地内でようやくタバコ畑に遭遇した=写真。
道路をはさんで畑が右と左に各1枚。そのあと夏井川沿いにいわきへ下ったが、タバコ畑は結局、これだけだった。阿武隈の「タバコロード」はもう記憶の中にしかないようだ。
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