那波多目(なばため)功一(1933~)という日本画家がいる。ひたちなか市(旧那珂湊市)出身だ。寡聞にして知らなかったが、茨城県天心記念五浦美術館で1月18日まで開かれている画業60年の回顧展を見て、心が揺り動かされた。
53歳ごろまでサラリーマン・企業家として暮らしながらも、こつこつと絵の制作を続けてきた。高校2年生で再興院展に入選するなど、早くから才能を発揮したが、高校卒業と同時に実業の世界に身を投じた。まずは生活の基盤を固め、絵も描き続けることを決めたのだ。この決断がすごい。
若いころのスケッチを見た。確かに才能に恵まれた人だったことが分かる。それを抑えて、とにかくメシを食うために働いた。日々の暮らしのなかで時間を絞り出しながら、絵を描き続けた。それから背水の陣を敷いて20年余。自在の境地に入ったかと感じた。
回顧展のタイトルは「牡丹幻想――花のいのちに魅せられて」。那波多目功一は「牡丹の画家」だった。写実的だが幻想的、生命感とはかなさと、きめ細やかなタッチと静謐さと……。牡丹に限らない。四季の花々を描いた作品に、同じような印象を受けた。私には「発見」だった。
企画展に連動して、館内で1月3、4日に新春イベントの1つ「大根むき花」実演が行われた。これがよく分からないで見たから、かえって面白かった。水戸市無形民俗文化財「大根むき花保存会」のメンバーが、包丁一本で大根から精妙な牡丹や菊、アヤメなど=写真=の花を造形する。「かつらむき3年、花8年」だそうだ。
画家のウデといい、大根むき花保存会のワザといい、人間は可能性の宝庫だ。そのことを感じ取れただけでも見に行ったかいがあった、というものだ。
53歳ごろまでサラリーマン・企業家として暮らしながらも、こつこつと絵の制作を続けてきた。高校2年生で再興院展に入選するなど、早くから才能を発揮したが、高校卒業と同時に実業の世界に身を投じた。まずは生活の基盤を固め、絵も描き続けることを決めたのだ。この決断がすごい。
若いころのスケッチを見た。確かに才能に恵まれた人だったことが分かる。それを抑えて、とにかくメシを食うために働いた。日々の暮らしのなかで時間を絞り出しながら、絵を描き続けた。それから背水の陣を敷いて20年余。自在の境地に入ったかと感じた。
回顧展のタイトルは「牡丹幻想――花のいのちに魅せられて」。那波多目功一は「牡丹の画家」だった。写実的だが幻想的、生命感とはかなさと、きめ細やかなタッチと静謐さと……。牡丹に限らない。四季の花々を描いた作品に、同じような印象を受けた。私には「発見」だった。
企画展に連動して、館内で1月3、4日に新春イベントの1つ「大根むき花」実演が行われた。これがよく分からないで見たから、かえって面白かった。水戸市無形民俗文化財「大根むき花保存会」のメンバーが、包丁一本で大根から精妙な牡丹や菊、アヤメなど=写真=の花を造形する。「かつらむき3年、花8年」だそうだ。
画家のウデといい、大根むき花保存会のワザといい、人間は可能性の宝庫だ。そのことを感じ取れただけでも見に行ったかいがあった、というものだ。
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