2016年3月25日金曜日

ネギ坊主の子ども

 あのとき――。在来作物の「三春ネギ」だけは種を切らさないようにしたい。そのためには栽培を続け、食べながら残して種を採る。そう決めた。
 20年近く前、夏井川渓谷の隠居の庭で家庭菜園を始めた。今は母国で暮らすオーストラリア人に教えられたが、「ベジパッチ」だ。パッチワークのパッチと同じで、それぞれ畳1枚くらいのスペースで、ニンジンとかキュウリとかキャベツとかを栽培した。よくいえば少量多品種栽培。菜園はそれらいろいろの野菜で最大、畳10枚くらいの広さにまでなった。

 3年前(2013年)の師走、隠居の庭が全面除染された。三春ネギは秋に種をまく。翌年初夏に定植し、さらに1年後、ネギ坊主から種を採る。除染作業が控えていたので、その年は種まきを中止した。1年後、前年の種をまいたら発芽した。とりあえず1年の空白は埋まった。
 
 ネギの種は冷蔵庫で保管する。発芽率は2年目には急落するが、「まあまあ」だった。しかし、ハウスと違って露地栽培だから「すくすく」育つのは難しい。虫にやられる。天気に左右される(根は湿気に弱い)。虫のなかでも大敵はネキリムシだ。根元をチョキチョキやるので、根っこは残っても大きくは育たない。あっという間に10分の1に減った。

 暖冬の今シーズンは、地上部は枯れて縮こまったものの、春になってたちまち元気を取り戻した。葉の根元にはネギ坊主の子どももあらわれた=写真(白いポツポツは石灰)。いつもの年より少し早い感じがする。

 ネギ坊主の子どもはやがてすっくと茎をのばす。初夏には丸くふくらんで先端に小花をいっぱい付ける。黒い粒々が見えるようになると種を採ることができる。去年は食べるのを控えた。その分、種がたくさん採れるはずだ。
 
 採種~保存~播種~定植~採種まであしかけ3年はかかる。本来ならうねに採種用のネギが残り、同時に秋に種をまいた苗床があるのだが、去年は種が採れなかったので苗床はない。今年はその種が採れる。秋には「新規まき直し」ができる。

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