2009年2月2日月曜日

ヨシを刈る人


わが散歩コースである夏井川の堤防の外側(河川敷)にヨシ原の広がっているところがある。ヨシ原のそばにはサイクリングロードが設けられている。冬はおおむねコハクチョウをウオッチングするために堤防の上を、夏は南から渡って来たオオヨシキリのさえずりを聴くために下のサイクリングロードを歩く。

四季を通じてキジが見え隠れし、チョウゲンボウがネズミを狙って上空を旋回している。水辺にはサギ類、そして冬になると現れるコハクチョウ、カモ類。川に接するヨシ原は結構、生き物の多いところだ。

枯れたヨシを材として利用するには、真冬に刈り取りをする。夏の日除けに使う葦簀(よしず)、ヨシの衝立、ヨシ葺き屋根……。ただし、おととしも、去年も夏井川のヨシは放置されたままだった。ところが先日、ヨシ原の一角が刈られてぽっかりすきまができていた。次の日早朝、そこで1人の男性が刈ったヨシを束ねていた。初めて見る光景だ。

葦簀にするのだろうか。だとしても、売るほどの数はつくれまい。運び終えたあと=写真=を見る限り、量的に多くはない。もっと小さいもの、たとえば衝立か、それに類したものか。まさかケーナ(ヨシ笛)をつくるようなことはないだろうな、などと思い巡らしたが分からない。

日本は「豊葦原(とよあしはら)」のクニ。ヨシの広がる湿地と湿気が特徴の島国だ。しかし明治以後、開発が進んで湿地が減り、ヨシ原も減った。琵琶湖に象徴されるように、現在はヨシ原を復活・再生する動きが広まっている。

春の芽吹きを助けるために、冬、枯れヨシを焼き払う伝統を守っているところもある。いわき地方では、堤防の野焼きをしてもヨシ原を焼き払う習慣はない、というより寡聞にして知らない。

いずれにせよ、枯れヨシに昔ながらの「資源」を見いだした人がいた。自然にはたらきかけて人間の生活に生かすウデを持っている人がいた。そのウデを生かしてなにか人間に役立つ新しい用具ができないものか。膨大な「資源」を横目に、ウデを持たない人間はしばし、「考える葦」ではなく「考える足」になって夢想するのだった。

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