いわき駅前の再開発ビル「ラトブ」に総合図書館が入居している。先日、本を返しに行ったら、「子どものフロア」にリサイクル図書のコーナーが設けられていた。
リサイクルに回された児童図書が何十冊(いや、それ以上だろうか)も箱に入って並んでいた。
本の背表紙をながめているうちに、『種をまく人』の文字が目に留まった。手に取って表紙の絵を見ると、既視感がある=写真。
ところはアメリカ・オハイオ州のクリーヴランド。貧民街の一角にごみ溜めがある。その空きスペースにベトナム難民の女の子・キムが豆の種をまく。それが物語の始まりだ。
表紙のイラストだけではなく、最初のキムの話にも記憶があった。間違いなく前に読んでいる。
リサイクルに回ったのであれば、ぜひ手元に置きたい。「これっ」。カミサンに見せると、カミサンが用紙に書き込んで受付に本を持って行った。
廃棄する代わりに市民に提供された図書館のリサイクル図書を何冊か持っている。
1つは伊藤始・杉田秀子・望月武人著『五日市憲法草案をつくった男・千葉卓三郎』(くもん出版、2014年)で、著者はいずれも教員経験者だ。児童向けの本で、漢字にはすべてルビが振ってある。
昭和43(1968)年、色川大吉東京経済大学教授とゼミの学生らによって、東京都のほぼ西端、あきる野市五日市の旧家の土蔵から「五日市憲法草案」が発見された。その経緯と草案起草者千葉卓三郎(1852~82年)の足跡を記した本である。
もう1つ。絵本の「やめて!」は表紙で男の子が叫んでいる。絵本には爆撃機・戦車・兵士・犬を引き連れた警官・不良少年が登場する。空爆・市街での発砲・弾圧・いじめに「やめて!」だった。
『種をまく人』はしっかりしている。ハードカバーなのだが、とても薄い。約95ページ。普通の本の3分の1くらいしかない。
キムが豆の種をまいたのは、農民だった亡父をしのんでのことだ。アパートの住人のアナはルーマニア出身で、そのキムを見るために望遠鏡を買う。
アナから電話をもらったウェンデルは学校の用務員で、アナの頼みでキムに会う。そして、畑をつくるために土を耕し始める。
グァテマラ移民の子のゴンサーロは、英語を話せない伯父さんの世話をする。伯父さんは国で農業を営んでいた。その伯父さんがウェンデルと一緒に土を耕すようになって生気を取り戻す。
リオーナは空き地で土を掘り返している人たちを見て、花を植えたくなり、市当局に掛け合ってごみを一掃させる。
以下、サム、ヴァージル、セヨン、カーティス、ノーラ、マリセーラ、アミール、フローレンスの話が続く。
アメリカの都市の、貧しい移民が流れ着いた街の一角の、どうしようもないごみ溜めが、少女のささやかな行為をきっかけに、人種・民族・言葉を越えてつながり、美しい菜園に生まれ変わる。土地の再生とコミュニティ創造の物語である。
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