2009年7月16日木曜日

ドクターの蔵書


懇意にしていたドクターが亡くなって何年になるだろう。奥さんから連絡があって、本を引き取りに行った。気に入ったものは手元に置いて結構、残りは売ってNPOの資金にしてほしい――。今度で2回目、いや3回目か。

ドクターの読書量というか、蔵書数は半端ではない。専門の医学書はさておき、哲学・政治・歴史・文学・経済・民俗その他、知的関心は万般に及ぶ。前回同様、段ボール箱で10箱あまりを2回に分けて車で運んだ。それをわが家でチェックする。

今回はまるで自分を見ているような錯覚に陥った。30代前半から読んでいる哲学者の内山節さんの本がごっそり出てきた。『労働の哲学』『労働過程論ノート』『山里の釣りから』『戦後思想の旅から』『時間についての十二章』『存在からの哲学』『森に通う道』『森の旅』『自然と人間の哲学』『哲学の冒険』など、内山さんの著作・関連本が20冊前後入っていた=写真

ドクターが内山さんのことを知ったのは、たぶん私を介してだと思う。内山さんの考えがピタッとはまったので、「こういう哲学者がいますよ」と本を読んだ感想を述べたら、早速反応した。真夜中に「内山哲学」について電話で語り合うこともあった。ざっと20年前のことだったろう。

段ボール箱の本をながめて、内山本はブックオフに持って行くわけにはいかない。そう思った。民法の碩学Yさんの言葉を思い出したのだ。「必要な本は自宅にも、研究室にも置く」。わが家には、内山さんの本はほぼそろっている。夏井川渓谷(いわき市小川町)の無量庵にはない。そちらに置こう。無量庵でも読むために。

ドクターは徹底して学ぶ人だった。そのうえで考え、一市民として行動することを基本においていた。

私は内山本のうち、特に『自然と人間の哲学』から学ぶことが多かった。いや、今も学んでいる。無量庵を軸にした暮らしの指針として、これほど深い教科書はほかにない――そう思っている。

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