2009年7月9日木曜日

カニの道


夏井川下流、いわき市平の市街地から河口へと、河川敷にサイクリンゴロードが整備されている。先日早朝、知人から譲り受けた“ママチャリ”でサイクリングロードを往復した。曇天ながらレースのカーテンのような雲を透かして、太陽が白金色に輝いていた。

かたや堤防、かたやヨシ原。ヨシは、背丈が2メートルを超えた。盛んにオオヨシキリがさえずっている。「六十枚橋」の下をくぐると、目の前を子ガニが早足で横切った。ロードの真ん中で空を見上げているカニもいた=写真。それが「カニの道」の始まり。

ヨシ原に続く草むらにアカテガ二がいる。ハサミも顔も赤い。最初のカニは脚に硬そうな毛が生えていたからベンケイガニだろう。

いったん堤防に上がり、河口にかかる「磐城舞子橋」を渡って右岸のサイクリングロードに移った。往復というより、川をはさんで一周したといった方が正しい。右岸のロードは左岸以上の「カニの道」だった。ペダルをこぐごとに、カニが草むらに逃げ込む。自転車に引かれて死んでいるカニも何匹かいた。

その日、仕事で知人に会った。早朝、自慢のサイクリング車で夏井川の河口まで行って来たという。メタボ対策だ。平市街地の高台に禅寺がある。「明け六つの鐘」を鳴らす。それを堤防の道で聞いた。私はそのころ、右岸のサイクリングロードでペダルをこいでいたはず。

ママチャリとサイクリング車とでは性能がまるで違う。彼は私より倍の距離をこなしても、かかった時間は私とそう変わらなかった。

それよりなにより、仕事のパートナー同士が同じ日、同じ道をほぼ同じ時間帯に自転車で河口まで行ったのは、行く気になったことも含めてそうあることではない。何かテレパシーがはたらいたか。

ついでながら――。「六十枚橋」は海側から数えて二番目の橋だ。その手前までは海風の影響で空気がひんやりしている。アカテガ二やベンケイガニが出没するのも、その橋をはさんだ辺りまで。三番目の橋の「夏井川橋」から上流ではまだカニを見たことがない(自宅近くの側溝上でモクズガニを見たことはある)。

山国育ちのせいもあって、カニの多さに目を見張った。サイクリング車の彼も目を丸くした。――この年になっても“発見“があるから、いわきは面白い。そんなことを、群れるカニから実感したのだった。

0 件のコメント: