2008年8月10日日曜日

霧の桧山高原


月遅れ盆に用事ができたので、一足早く実家へ帰って墓参りをした。ついでに、伸びに伸びたたてがみをばっさりやってもらう。兄夫婦は床屋を営んでいる。

田村市常葉町。阿武隈高地の主峰・大滝根山(1193メートル)の北西麓に広がる、わがふるさとの町の戦略的キーワードは「高原」。「高原」と言えば「さわやかな風」――と連想がはたらくのを見越して、誘客作戦を展開しているらしい。イメージとしては貧弱だが単純、空疎だが明快。確かに「さわやかな風」は、都会にはないものだ。

いわきから川内村へ抜け、大滝根山を越えて常葉町へ入る。今年の夏は蒸し暑いことは蒸し暑いが、なにか梅雨が明けきっていないような印象がある。阿武隈の山頂部がたえず霧をまとっているからだろうか。大滝根山もそうだった。濃霧というほどではないが、遠望がきかない。

山頂部を走る県道富岡大越線を下りかけると、すぐ桧山高原(常葉)への入り口が目に入る。生まれてこのかた、桧山高原をじっくり歩いたことはない。時間はある。思い立って道を右折し、砂利道を奥へ奥へと進む。

しばらく行くと急に立派なアスファルト道路に変わり、やがて起伏に富んだ広い草原が現れた。さらに進む。1カ所すり鉢状になっているところに池があった。池の近くにはトイレと炊飯棟、管理棟。丘にはあずまや=写真。キャンプサイトになっているのだ。子どもたちが3人、池に釣り糸を垂れていた。稜線は霧に隠れて見えない。

かたわらに阿武隈高原中部観光連絡協議会が立てた「桧山高原周辺案内図」の標識がある。それによれば、キャンプサイトは面積が100万平方メートル、つまり100ヘクタールという広大さ。晴れた日には360度のパノラマが展開し、太平洋も望める。そのうえ夏の平均気温はおよそ20度だという。まさに「さわやかな風が吹き渡る桧山高原」だ。

実際にはひんやりした風が霧を走らせていた。半そででは寒いくらいだった。

池の東側には木道が設けられている。小湿地で、春はミズバショウが咲く。ヤマアジサイと名前の分からない花が何輪か咲いていた。北側の森はブナ林。車で乗りつけて、簡単にミズバショウとブナ林が楽しめる場所だとは知らなかった。

天上の草原である。一日たっぷり歩き、休み、飲み食いして過ごしてみたい。夜は満天の星に圧倒されるだろう。木道近くに立っていた案内標識には「桧山高原リフレッシュエリア」とあった。その通りに違いない。

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