2009年6月15日月曜日

イノシシの置き土産


土曜日(6月13日)、夏井川渓谷(いわき市小川町)の無量庵に泊まった。2週連続の週末泊は久しぶりだ。行ったらすぐ、三春ネギの溝に巣くっているネキリムシをさがして始末し、翌日曜日にはキヌサヤエンドウを摘み、キュウリ苗のひげがうまくテープに絡むよう誘引する――そういうもくろみで出かけた。

「飲み過ぎないように」。カミサンからきつい達しがあった。2番目の孫がこの世に生まれ出るかもしれない日だというのに、無量庵へ泊まりに行くのかと、目が詰問調になっている。

半分は仕事を兼ねている。6月20日の午後に野口雨情記念湯本温泉童謡館でおしゃべりをするための資料の読み込みをしなくてはならない。無量庵の方がはかどる。それを言い訳にしたところもある。

日曜日は早朝4時半に起きた。朝茶をのんで頭を目覚めさせたあと、菜園に出て予定の作業をする。と、すぐ電話が鳴った。「4時半ごろ、生まれたって」。なにか不思議な時間の一致だ。

急いで作業を済ませ、前の晩の残りで早い朝食をとっていると、孫の親から電話がかかってきた。「病院へ来るのはゆっくりでいい」。予定の行動には「森巡り」も入っていた。では、そうするか。一番列車が通過する前に森に入った。

この時期の目当てはただ一つ、ウスヒラタケの発生を確認すること。土曜日の早朝、平地の石森山でウスヒラタケを収穫した。それで、間違いなく夏井川渓谷でも発生しているはず、と踏んだのだ。あるとすれば、岸に近い場所の、あの倒木――狙いを定めて直行すると、あった。あした(6月16日)あたりが採りごろのウスヒラタケが群生していた。

「写真で採(撮)る」だけにして、やぶこぎを続ける。ちょっとした斜面を上ると、黒々と輝くイノシシのフンに出合った=写真。黒い碁石を軟らかくして何個も重ねたような感じ。人間に歩きやすいところはけものにも歩きやすいところだった。知らず知らずに“けもの道”を進んでいたのだ。

林床には半分朽ちかけた落ち葉が堆積している。その落ち葉のじゅうたんに点々とへこみができていた。イノシシの足跡だ。食事を終えたあと、フンをひり出し、悠然とねぐらへ戻るイノシシの姿が想像された。

イノシシはさっきまでここにいた。早朝6時過ぎ。今、ここにいる哺乳類はイノシシと交代するように現れた人間ひとり――。どうでもいいことを考えたら急に人恋しくなり、急いで自宅へ戻った。

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