2009年6月8日月曜日

墓場のへりの桑の実を


散歩コースの一角に寺がある。本堂の前には墓が密集している。周囲を住宅が囲んでいるので、横道に入らなければそれとは分からない。西側の境界に沿って木が植えられている。なかに1本、桑の木がある。

その実が赤く色づき始めた。黒く熟した実もある=写真。熟果を口に入れる。甘い。「山の畑の(私には、墓場のへりの、となるが)、桑の実を、小籠につんだは、まぼろしか。」。三木露風の童謡「赤とんぼ」を思い出す。

子どもではないから、パクパク口にするようなマネはしない。一日おきに一粒、恵んでもらうような感覚で摘む。人がいれば素通りする。やはり人前では抵抗がある。で、夕方は近寄らない。早朝だけの寄り道。

夏井川渓谷(いわき市小川町)の無量庵の近くにも、やや高木になった桑の木がある。実がなってもあらかたは手が届かない。脚立を持ち出すほどでもないから、そのままにしておく。おととい(6月6日)見たら、実はなかった。

平市街地の裏山とも言うべき石森山はどうか。丹念に探せば桑の実はおろか、キイチゴ(モミジイチゴ)にも出合えるだろう。30代には縦横に張り巡らされた遊歩道をよく歩いたから、現地に行けば「ここでアケビを、あそこでヤマボウシの実を、ウラベニホテイシメジを、桑の実を」と、採った場所が思い浮かぶ。

それもこれも少年時代の記憶が黄金に輝いているからだ。桑の実を口いっぱいほおばると、唇が、舌が「ぶんず色」(黒みがかった紫紺色=ヤマブドウ色)になった。大人はそれで子どもたちが山遊びをしてきたことを知る。この年になって「ぶんず色」になるほど食べてみたい、という欲望を抑えきれない。ワラシにかえりつつあるのか。

0 件のコメント: