2009年6月3日水曜日

いわき民話を聴く


先日、特定非営利活動法人「シニア人財倶楽部」の通常総会が開かれた。代表の藁谷道弘さんに一本釣りをされたこともあって、初めて出席した。総会後、やはり会員でもあるいわき民話の会長広沢和子さんが民話の語りを披露した=写真

広沢さんは、私が20歳のころから世話になっている「いわきの姉さん」だ。会社を定年で退職したあと、地元・好間町の地域振興協議会に加わり、地域活動を続けている。「好間の民話」を収集・記録するグループの一員になったのが縁で「語り部」となり、いわき民話の会を立ち上げた。

語り部歴はおよそ8年という。「いわきの民話をいわきの言葉で」がモットーだ。その通りに真正いわき語で「出べそかかあ」「食わず女房」、好間川を舞台にした「蛇岸淵(じゃがんぷち)」などを披露した。

広沢さんはいわき生まれのいわき育ち。地金がしっかりしているから、いざとなったら「いわき語」は自由自在だ。登場人物が乗り移ったような迫真性、民話の語り部というよりは一人芝居の役者のような演技力。「いわき語」の躍動感、力強さが小気味よかった。民話を自分のものとするために随分努力をしたのだろう。

「お天道(てんと)様とお月様と雷(らい)様」には笑った。湯本温泉の旅館に泊まった3人が翌日出発する。お天道様とお月様は早く出発した(「月日がたつのは早い」から)、これに対して雷様は夕方に出発した(「夕立ち」だから)。一種のダジャレ(地口)である。

土地に根を生やしているからこそ醸成される、したたかな庶民のユーモア感覚。これなどは、根なし草のように頼りない現代人が忘れているもののひとつだろう。たわいもない話なのに心のしみがきれいさっぱり洗い流された感じだった。

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