2009年6月14日日曜日
梅雨の楽しみ
うすぼんやりした空模様に脳のスイッチが入った。記憶の底で動き出すものがある。えーと、えーと……。河口ではない。里山だ。晴れてはいない。湿度が高く、どんよりしている、梅雨のある日。ピントが絞られてくる。梅雨キノコ! 早朝散歩の途中でウスヒラタケの映像が浮かび上がった。
家に着くとすぐ、石森山へ車を走らせた。この山の遊歩道に入るのは2カ月半ぶり。いつもの場所に車を止め、いつものペースで遊歩道を歩く。せせらぎを眺め、草むらをのぞきながら、ゆっくりと。
石森山で一番空中湿度が高い、すり鉢の底のような小道にチップが敷き詰められている。このチップから強毒のニガクリタケが大発生していた。去年もそうだった。ヒトヨタケの仲間と思われる灰色のキノコ、柄がナラタケに似た黄褐色のキノコもある。中央は乾いて白くなっている。猛毒のコレラタケだ。
道端の倒木にシャツのボタンほどの白いキノコが生えていた。目を凝らす。生まれたての小さなウスヒラタケ。幸先がいい。いよいよゆっくり歩く。奥の、湿度の高い場所に、やはりウスヒラタケがあった=写真。採りごろだ。別の遊歩道にも入る。こちらは、行けども行けどもチップのニガクリタケばかり。
よし、帰ろう。朝飯前のキノコ採取は、ぐずぐずせずに素早く切り上げるのがコツ。きびすを返しながらも目は休まない。行きと帰りとでは視点が異なるので、隠れて見えなかったものが見えることがある。やはり、あった。一段と成長したウスヒラタケがせせらぎの倒木に生えていた。
記憶に促されて山に入ったら、ちょうど一食分くらいのウスヒラタケを手に入れることができた。早速、バター炒めにして食べた。これが、どんよりした梅雨の日の楽しみでもある。
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