日の出は、夏至から冬至まではおおむね1日に1分遅くなる。冬至から夏至までは逆に1分ずつ早くなる。日の入りも同様で、冬場は1分ずつ早くなり、夏場は1分ずつ遅くなる。周期が約29.5日の月は同じように1日1時間を目安にするといい。
現役のころは、季節のニュースやコラムを書くのに「俳句歳時記」が欠かせなかった。夏井川渓谷の隠居で土いじりを始めると、太陽や月などの天体の動きを反映した農事暦も参考にするようになった。そこから「太陽は1分、月は1時間」という目安が生まれた。
11月16日の日曜日は朝8時ごろ、隠居に着いた。空は晴れているのに太陽はまだ尾根の陰にある。V字谷である。日が差さないので、庭に立っていると肌寒い。
隠居は、集落では一番下の道路端にある。山側の家はすでに朝日に照らされている。標高が高い分、早く太陽が拝めるのだ。
家々の裏山から始まって、田畑、線路、道路と尾根の影が消えるころ、入り組んだ対岸の尾根に日が差し始める=写真上1。
この日の小名浜の日の出は6時15分。渓谷の隠居に最初の朝日が差し込んだのは、それからざっと2時間後だった。
風はない。庭にはまだ山の影が広がっている。その影が時間を追って川岸へと後退していく。
時には朝日に背を向けて立つ。焚き火で背中を温めるのと同じで、風がない分、背中がゆっくりぬくもってくる。生きものたちもそうして体を温めているのかもしれない。
やがて不耕起栽培の辛み大根の畑も明るい光に包まれる=写真上2。まだ地面が凍り付くほどではない。
普通の大根を栽培していたときのことである。霜をかぶってペタッとなった葉が朝日に照らされ、霜が溶けるにしたがってピクン、ピクンと立ち上がる。うねのあちこちでピクン、ピクン。この葉っぱのダンスを見るのが冬の楽しみだった。
辛み大根の葉も霜をかぶるとペタッとなる。しかし、葉が小さいからか、はっきりわかるようなピクン、ピクンはまだ見ていない。
隠居では日の入りが早い。ほかの家ではまだ太陽が見られるのに、土地が低い分すぐ日が陰る。冬至のころは午後3時になると太陽が尾根に隠れる。
その時間に尾根に隠れる太陽を「夕日」というのははばかられる。太陽の姿が消えても、空は明るい。
同じ太陽でもマチ(平地)とヤマ(渓谷)では見方が異なる。その違いを知る。楽しむ。渓谷の自然には学ぶことがいっぱいある。
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