2025年11月12日水曜日

画家ビリービン

                                              
  ネットの特性なのか、ユーザー(私)が「いいね」をしたり、何かを検索したりすると、ブログの下段広告やSNS(フェイスブックなど)のタイムラインに、それに似た情報・広告がすぐ表示される。

ネットには「アルゴリズム」といって、ユーザーの興味を引きそうなコンテンツ(情報)を優先的に表示する仕組みがあるらしい。

そんなアルゴリズムの作用のひとつなのか、先日からフェイスブックのタイムラインに西洋の絵画作品が並ぶようになった。

特に19~20世紀の美術作品が、これでもか、これでもかと表示される。こちらも興味があるのでたびたびクリックする。それの繰り返しで、今も表示が続いている。

たまたま絵の周囲にキノコらしいものが描かれている作品があった。クリックすると構図がよりはっきりした。案外、不気味な絵である。

たいまつ? いや、たいまつではない。足元を照らすのはどくろの目から発した光だ。そのどくろをたいまつ代わりに掲げた若い女性が、建物をバックに夜の林を歩いている。

足元には、赤や茶色っぽいキノコが生え、絵の周りの「額縁」(縁飾り、あるいは飾り枠というらしい)にもキノコが描かれている。

画家はロシアのイワン・ビリービン(1876~1942年)。ビリービンを検索すると、面白い情報が次々に表示された。

図書館には1冊、田中友子『ビリービンとロシア絵本の黄金時代』(東京美術、2014年)がある。すぐ借りてきた。

どくろのたいまつとキノコの絵はロシア民話「うるわしのワシリーサ」の一場面を描いたものだった=写真。挿し絵である。

ビリービンはイラストレーターで、アールヌーボーやジャポニスムの影響も受けた。図書館の本には葛飾北斎の富士山と砕ける波頭を描いた「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模した「サルタン王物語」の挿絵も収められている。

「ビリービン様式」という言葉も知った。手塚治虫はこの様式を利用して筒井康隆の「イリヤ・ムウロメツ」の挿絵を手がけたという。ロシアの物語だから、ビリービンの挿絵にならったのだろう。

「ビリービン様式」が何を指すのか、最初はさっぱりわからなかったが、手塚作品に出合って、絵とそれを囲む枠にも絵を施す技法をいうらしいことがわかった。

ビリービンは、ベニテングタケはもちろんだが、それ以外のキノコも描いている。そこがいい。

その「弟子」にゲオルギー・ナールプトがいる。ロシア昔話の「きのこ戦争」の挿絵を描いている。今度はこの画家を探ってみるか。

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