夏井川渓谷は、春はアカヤシオ(岩ツツジ)、秋は紅葉の名所として知られる。ビューポイントは渓谷の中間にある牛小川。戸数10戸ほどの小集落だ。
震災前、土地の所有者が県道沿いの空き家を解体して更地にし、谷側の杉林も伐採した。
更地は「錦展望台」と名づけられ、行楽客に開放された。所有者が亡くなったあとは、地元に住む親戚のAさんが維持・管理をしている。
わが隠居はその隣にある。隠居の隣は東北電力の社宅跡で、錦展望台ができるまではそこが行楽客の駐車場とビューポイントだった。
電力の土地は二段低い岸辺まで続いている。対岸に夏井川第二発電所がある。対岸へはつり橋を渡って行く。タヌキたちもここを利用して集落に現れる。
つり橋の手前に作業車が止まっていることがある。その通路が錦展望台と隠居の間にあって、ふだんはゲートが閉まっている。
一帯は「夏井川渓谷県立自然公園」に位置付けられている。自然公園のエリアは①夏井川本流、背戸峨廊(せどがろ=江田川)、二ツ箭山を含む地域②水石山、閼伽井嶽を含む地域――の二つからなる。
ある日、通路から谷側のヨシ原(東北電力の土地)が刈り払われてきれいになった=写真(9月21日撮影)。
錦展望台から下りていけるビューポイントとして開放してほしい――。かつて発電所で働く住民もいて、地元とのつながりは深い。それもあって地元の要望に会社がこたえた。
県立自然公園なので木々の伐採などには県の許可が要る。県の指導に沿って草刈りと伐採をするまでに半年ほどかかったという。
展望スペースの拡大をはたらきかけた知人らは、電力の土地につながる私有地の草刈りをし、展望台から歩いて行けるスペースを確保した。広い空間で自然の景観を楽しんでほしい。郷土愛の発露ではある。
親しくしているKさんの話だと、ヨシ原は昔、社宅に住む従業員が畑として利用していた。広く平坦なわけがそれでわかった。Kさんは、「それに」といった表情で付け加えた。「茂みをなくせばクマ対策にもなる」
そうだった。今年(2025年)7月31日、川前町下桶売地内の県道小野富岡線でツキノワグマが目撃された。
現場は牛小川の北西方向、山が幾重にも連なる山間地だが、直線距離ではわずか15キロしか離れていない。
去年までは、クマの出没は遠い地域の出来事だった。が、東北・北海道を中心に、連日、人間の生活圏にクマが出没して危害を加えるというニュースが流れて、いわきの山間部でも現実問題として認識されるようになった。
先日、後輩が隠居の上と下の庭の草刈りをしてくれた。生い茂った草がきれいになくなった。草刈り中にクマが現われないかと、気が気でなかったという。
まずはクマが身を隠す茂みをなくすこと。いつもの草刈りであっても、今は新たな目的が加わった。
そして、ときどきは市が作成した「クマ目撃マップ」をチェックする。この秋以降の新しい習慣ではある。
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