2009年5月28日木曜日

ぞそっぺぇ


夏井川渓谷の小集落(いわき市小川町上小川字牛小川)で土曜日(5月23日)の夜、区の臨時総会が開かれた。そのあと総会恒例の懇親会に移り、懇親会恒例の「サバイバルグルメ」の話になった。週末、街からやって来る私が山菜やキノコ、木の実に興味を持っているためばかりではないだろうが、話はたいていそこに落ち着く。

「どこそこのラーメンがうまい」といった話がないわけではない。そういう「レストラングルメ」情報はネットで数限りなく発信されている。が、生存するためには、頭をレストラングルメ4割、サバイバルグルメ6割、そういうあんばいで使うべきだ、というのが私の考え。なにがなんでもではないが、ゆるやかにそう思っている。

サバイバルグルメを実践するにはいつも頭を働かせていなければならない。いつ採れる(捕れる)か、いかに採る(捕る)か、どう料理するか。そこに暮らし、生きるために創造力と想像力を傾ける。それが山里で暮らす人間の主要な関心事、といったら怒られるか。

食材は家の周りにあふれている。山菜・キノコ・木の実・昆虫・鳥・魚・獣……。懇親会では、その収穫(捕獲)・調理方法と味覚が次々に披露される。末法の世になろうと牛小川、いや山里の人間は何かを食べて生き延びるウデを持っている、というのはウソではない――それほど自然界について精通している。

そのウデも知恵もしかし、さまざまな試行錯誤の積み重ねによって鍛えられてきた。オニグルミは硬い殻を割って中身を食べる。「実が食べられるのだから、葉(新芽)=写真=も食べられるに違いない」。食に関して貪欲なKさんが挑戦した。

てんぷらにしたそうだ。その味は? 私に分かるように説明する。「このへんの方言で『ぞそっぺぇ』というやつ」。「ぞそっぺぇ?」。「ぞそ」から「ぞそぞそ」「ざさざさ」になる感じは分かるが……。 いまひとつピンとこない。

5月25日は月末の月曜日だから、いわき総合図書館は月1回の休み。おととい(5月26日)、いの一番に行って、方言関係の本をパラパラやった。こんな感じかな、ということがつかめた。浜通りと中通りの北部・中部で使われる「ぞそっぱい」。「ざらざらしている」という意味だ。

なにが食べられるか、なにが食不適で毒か。山里では今もこうして試行錯誤を重ねながらサバイバルグルメの知識が蓄積されていく。食文化の現在進行形が「ぞそっぺぇ」という方言から見えてきたのだった。

1 件のコメント:

セキ さんのコメント...

こんにちは。毎回更新(特にきのこ)を楽しみにしています。

”ぞそっぺえ”
私自身は使ったこと無いのですが、
草野二郎さんの「いわき市小川町地方の方言」に”ごそっぺえ”と同義として載っていました。