2009年7月23日木曜日

オオヨシキリ去る


わが家の庭でエンマコオロギが鳴き出した。エンマコオロギは、気温が20~30度になるとよく鳴くそうだ。ここ何日か梅雨空なのに気温の高い日が続いた。それで、演奏家としての本能が目覚めたのだろう。

一方、夏井川のヨシ原では、この連休をはさんでオオヨシキリのさえずりがピタリとやんだ。「ギョギョシ、ギョギョシ」とオオヨシキリがやかましく歌い合っていた水辺の空間に沈黙が広がる。先週までの歌の残響が現実の沈黙を受け入れられないので、気持ちが落ち着かない。沈黙に慣れるまで少し時間がかかりそうだ。

きのう(7月22日)早朝、再度、オオヨシキリの有無を確かめるために、ヨシ原に接するサイクリングロード=写真=を散歩した。時折、「ギョッ」とか「ギュッ」とかの地鳴きは耳に入るものの、さえずりはとうとう聞かれなかった。すっかり呆けたウグイスの歌と、ホトトギスのさえずりが聞こえるばかり。オオヨシキリは一斉にヨシ原を去ったのだろう。

今年、オオヨシキリの第一陣が南から到着して、ヨシ原で歌い出したのは4月20日。去年より10日ほど早かった。歌い終わりも去年より10日ほど早い。夏井川のヨシ原の例でいえば、オオヨシキリは正味3カ月で求愛・結婚・子育てを済ませるわけだ。その期間がこの四半世紀でやや早まっている、というのが私の印象だ。

夏至からおよそ1カ月。昼の時間が縮み、夜の時間が延びる時期に入った。そのなかで、エンマコオロギが鳴き出し、オオヨシキリが南へ去った。1匹は耳鳴りのように、複数になると読経のように、ニイニイゼミも歌い始めた。やがてヒグラシ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシと、セミたちの輪唱が続く。

この先、暑さが募るかげで秋が忍び寄ってくるというのは、季節の巡りのなかで当然のこと。雨雲が空を覆ったきのう昼前、いわきで部分日食を目撃した人は幸せだった。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

夕方はヒグラシがそして暗くなるともう秋の虫が鳴き始め旧暦では秋に入るのかと思えば心なしか時間の速さに圧倒されます。

スズメは1年で一生を終えると思えば、蝉は土の中が大半の生涯。

時間を識った人間だけが四季の流れに身を任せて今この瞬間を生きるのが空っぽになるのかと思い知らされます。