2008年6月14日土曜日

ドクターの本


懇意にしていたドクターが亡くなって何年になるだろう。奥さんから電話があって、ドクターが読んでいた本の一部を整理したので、リサイクルに使うならどうぞ、という。夫婦で出かけた。新書を中心に文庫と単行本が小さな段ボール箱に5箱あった。ドクターの蔵書全体からすれば、ほんの一部にすぎない。

自分で読みたい本、いわき関係の本など二十数冊=写真=を手元に残したほかは、特定非営利活動法人「シャプラニール=市民による海外協力の会」が行っているブックオフ「宅本便」に回す。本の買い取り金はそのままシャプラニールに寄付されるのだ。

シャプラニールは、バングラデシュとネパールをはじめとする南アジアで、最も厳しい状況に置かれた人々とともに、貧困問題の克服に取り組んでいる民間の海外協力団体(NGO)で、村人の生活向上支援やストリートチルドレン支援などを行っている。1972年に創立された。その中心メンバーがいわき出身の私の友人だったので、以後、シャプラニールとパイプを持つようになった。

哲学から文学、歴史、専門の医学を中心にした自然科学系の随筆、その他。ドクターの本には偏りがない。人間とは何か、自然とは何か、人間と自然の関係はどうあるべきか――そうした根本的な問いを胸において読書遍歴を続けた。時々、夜更けに電話をよこして感想を語り、こちらの意見を求めることもあった。

私が哲学者の内山節さんの本を読んでいるというと、ドクターも彼の本を買って読み続けた。今回は内山さんがらみの本が2冊出た。それは私が引き取り、夏井川渓谷の無量庵に置くことにした。読みたい本は何冊あってもいいのだから。

さて、シャプラニールの「ステナイ生活 リサイクル&リユースで海外協力」のリーフレットによれば、2,000円(古本約20冊)で伝染病を予防する衛生的なトイレを1基設置することができる。4,000円(書き損じはがき約90枚)で教育を受ける機会のなかった成人1人が文字の読み書きを半年間学ぶことができる。6,000円(CD約40枚)でストリートチルドレンが通う青空学校を1カ月間運営することができる。

日本人の感覚では大した金額ではないが、向こうの国では実にいろいろと有効な使い方ができる。身近にある不用なものを捨てずに生かす――どこの家でもやれる海外協力、というところがミソだ。

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